Linux Kernel Conference 2002発表資料

 OSDNジャパンは、2002年10月9,10日の二日間に渡り「Linux Kernel Conference 2002」を開催致しました。VA Linux Systemsジャパン技術部の高橋浩和をチェアマンに迎え、国内外の著名なカーネル開発者を招聘し、カーネル2.4の詳解といった入門からこれからの開発方向性、機能別解説等、幅広い内容の講演を行いました。ここでは、そのときに公開された発表資料を紹介しています。

  • 10月 9日(水):チュートリアルプログラム
  • 10月10日(木):カンファレンスプログラム

チュートリアルプログラム

「Linux カーネル入門」

安井 卓 (VA Linux Systems ジャパン株式会社 )

 Linuxの動作を詳しく知るためにはカーネルを避けて通ることはできません.しかし,カーネルの動作は複雑で,簡単には手を出せないのが現実です. 本セミナーでは、これからLinuxカーネルを触ってみようと思われている方を対象とした、カーネルの全体像の解説です。

 <講演資料 (PDF)>

「User Mode Linux 活用法」

宮本 久仁男(Group TODO)

 User Mode Linux(以下UMLinux)は、ユーザプロセス空間で動作するLinuxカーネルです。本プログラムでは、

  • UMLinuxの構成と他の仮想マシン環境との違い
  • UMLinuxがどのような環境を作り出せるか
  • UMLinuxの向き不向きとセキュリティ
  • 仮想環境の作成例

等について解説しています。

 <講演資料 (PDF)>

「Linuxにおけるデバイスドライバの開発とデバッグの実際」

日高 亜友(株式会社デバイスドライバーズ 代表取締役)

 Linuxデバイスドライバの動作の仕組みと操作方法といった基本的な内容から、実際の開発手法やデバッグまでを、実機を使ったデモを行いながら解説していきます。特にローダブル・モジュールによるLinuxのデバイスドライバ開発を進める上で必要な基礎知識や、printk()以外のデバッグ・テクニックに焦点を当てて、2.4系カーネルが動作するPCとUSBデバイスを使って、ネットワーク上から入手できるサンプルソースコードを取り上げて、実際の開発やデバッグの状況を実機上で再現しながら解説しています。

 <講演資料 (PDF)>

 <ソースリスト集(ZIP)>

カンファレンスプログラム

「カーネルサミットの報告とファイルI/Oの最新技術」

高橋浩和 (VA Linux Systems ジャパン株式会社 技術部)

 現在もLinuxカーネルの開発は活発に続けられています。カーネルv2.5の目標もv2.4と同じく、エンタープライズ用途向けの強化が中心となっています。私は2002年6月末に開催されたLinuxカーネルサミットには運良く参加することができ、実際のLinux開発者達の生の声を聞くチャンスに恵まれました。本セッションでは、Linuxカーネルサミットの話を交え、今後の開発の方向性を中心に解説しています。

 <講演資料 (PDF)>

「Linuxカーネル状態トレーサ(LKST)」

杉田 由美子/畑崎 恵介 (株式会社日立製作所/システム開発研究所/中央研究所)

 Linux Kernelの障害解析用に開発したイベントトレーサLKSTの紹介を行ないます。トレーサはカーネル障害の原因を素早く解明するために必要なツールです。LKSTはLinuxの多様な障害状況に柔軟に対応するため、必要情報を採取する機能の加え、目的にあわせて情報の収集方法や記録方法を動的に拡張・変更する機能を実装しました。これにより、必要情報の確実な回収、容易な目的情報の取得、常時稼動におけるトレースオーバヘッドの削減を実現しています。今回はLKSTの持つ機能、実装方式、性能評価などの紹介です。

 <講演資料 (PDF)>

「Beowulfクラスタに有効なLinuxカーネルおよびシステムの拡張」

ドナルド・ベッカー(Scyld Computing Corporation/Founder & CTO)
Donald Becker

 第二世代Beowulfクラスタとなる"Scyld Beowulf"はマスター機に必要なユーティリティやアプリケーションをフル実装しますが、スレーブ機にはローカルディスクやネットワーク・ファイルシステムが不要、という革新的な構造になっています。本セッションではBeowulfの歴史に触れたうえで、"Scyld Beowulf"が既存システムから改善した以下の項目について詳しく解説します。

  • カーネル拡張
  • システムライブラリの強化
  • 独自ブートシステム

 <講演資料 (PDF)>

「タスク構造体のカラーリングによるプロセススケジューラの高速化」

山村 周史(株式会社富士通研究所/ITコア研究所グリッド&バイオ研究部)

 我々は,Linuxをエンタープライズ分野に適応することを目的として、過負荷時の安定性やCPU増加に見合う性能スケーラビリティ向上のため、システムの定量的な評価・分析を行っています。本セッションでは、我々の行っているシステム分析手法について紹介し、この手法により確認されたプロセススケジューラ内部で多発するキャッシュミスについて詳しく述べます。この問題を解決するためにタスク構造体に対してキャッシュカラーリングを適用し、この改良により8-way Pentium IIIシステム上で、Webサーバ性能が23.3%、Chatサーバ性能が89.6%の向上が見られました。 なお、本セッションの主要な部分は、今年6月に開催されたUSENIX Annual Technical Conference 2002にて発表した内容です。

 <講演資料 (PDF)>

「LinuxにおけるACPI構造の解説」

夜久健一 (NECシステムテクノロジー株式会社/プラットフォーム開発事業本部)

 LinuxカーネルにおけるACPI構造を、ACPIドライバ、BIOS、ハードウェアのインタフェース、およびイベント発生時の処理を通して解説しています。

 <講演資料 (PDF)>

「エンタープライズ・システムに向けたLinuxカーネルサポートの現状」(Kernel support for Enterprise Systems)

サイモン・ウィンウッド(The University of New South Wales/ Ph.D. student)
Simon Winwood

 高性能システムやエンタープライズ用途システムへのLinuxの採用は増加傾向にあります。また、そのような高い要求に応えるべくカーネルの(性能・機能)改善を目指すプロジェクトも多数出現しています。本セッションでは,私が専門としている"multiple page size support"について詳しく解説し、さらに「エンタープライズ」という視点から重要と思われるいくつかの他のプロジェクトについての解説も行います。

 <講演資料 (PDF)>

「USAGI Project による Linux IPv6 スタックの改善と実装」

関谷勇司(慶應義塾大学/USAGI Project)

 USAGI Projectは2000年10月に発足以来、Linux IPv6プロトコルスタックの改善と、新機能の実装を行ってきた。具体的には、NDPの改良、アドレスアーキテクチャやAPIの新しい仕様への適合、IPv6/IPv4 bindロジックの改良、IPsecの実装、アプリケーションのIPv6化等を行ってきた。これらの改善について解説する。さらに、これからのUSAGI Projectの実装計画とオリジナルカーネルへのマージについて述べ、意見を募る。

 <講演資料 (PDF)>