[新規公開] Weekley英語語源辞典のEPWING版
2012-12-22 15:56 (by ohkubo-k)

1年半かけて、著作権の切れた(ものでは最新の)英語語源辞典
    E. Weekley, An etymological dictionary of modern English (1921)
    http://archive.org/details/etymologicaldict00weekuoft
    http://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Weekley
を全文テキスト化し、電子辞書のEPWINGデータにしました。
検索方法を工夫して、ある語の語源が何かを調べるだけでなく、逆にある語が
語源となっている語を検索できる様にしました。

一旦テキスト化した後、数ヶ月かけて全文を校正読みしてミスを修正しましたが、
修正漏れが無いわけはありません。また、1921年初版のため、その後約百年の
言語学の進歩が反映されておりません。しかし、ラテン語・ギリシャ語と英語、
さらには仏独伊西などとの関係を確認する最初の一歩としては、十分に有効と
思います。お手持ちの様々な辞書と引き比べながらお楽しみください。

    http://classicalepwing.sourceforge.jp/
    http://classicalepwing.sourceforge.jp/download.html#etym

    http://sourceforge.jp/forum/forum.php?forum_id=30535
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★Weekley語源辞典について
見出し語は2万件です。
ほとんどが英単語ですが、仏伊などのほか、日本語(banzai, hara-kiri, shogunなど。
解説はちょっと怪しい・・)も若干あります。
語源解説には、様々な時代の様々な言語(アラビア、ペルシャ、ヒンディー、
ノルマンなども)が出てきます。
およそ百年前の辞書のため、ドイツ語・フランス語などの綴りが今の正書法とは
異なるかもしれません(私には分かりませんし、テキスト化で修正しません)。

ラテン語の動詞が語源のとき、辞書見出しでなくて、不定法現在の形で記されて
います。以下では、辞書見出しに直しました(amareでなくamoなど)。

正直なところ、私には辞書の内容の1%も分かりません。
テキスト化の誤りなどありましたら、掲示板
    http://sourceforge.jp/forum/forum.php?forum_id=18877
までご連絡ください。


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何か辞書一冊(約850ページ)を通読したのは、もちろん人生で初めてです。
生きていく上では全く何の役にも立たない、アモン・シェイの『そして、
僕はOEDを読んだ』(三省堂)を小躍りしながら読んでしまった方のために
(私だけではないですよね?)、強烈に印象に残った単語などをご紹介します。
    #シェイ氏のように、まじめにノートを取らなかったのをちょっと
    後悔しています。
    http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/gen/gen4lit_etc/oed_yonda/
言語学とは全く関係ない話もありますが、語源を探ることは様々な分野の
歴史を探ることであるし、言葉はその歴史を背負っていると痛感しました。

なお、私はただの素人ですので、特に*以降のコメントは誤りがあるかもしれず、
どうか真に受けないでください。?マークだらけです。
    #まともな英語学習は高校で終了、仏独伊西などは「指差し海外旅行」級、
    ギリシャ語は今年も一ヶ月で挫折しました。ラテン語だけ6年続いているのは
    ラテン語MLとアテネ・フランセ(の他の受講生の方々)のおかげです。
羅は古典ラテン語、希は古典ギリシャ語です。
単語の和訳は、私が適宜選択したもので、全ての訳語を載せていません。
また、長短母音の記号などは原則として記していませんが、どうぞご容赦ください。

Weekleyの他に参考にした辞書は以下です。
[ODEE] Oxford Dictionary of English Etymology (OUP, 1966)
[OED] Oxford English Dictionary, 2nd ed. CD-ROM v.4.0.0.3 (OUP, 2009)
[Chambers] Chambers Dictionary of Etymology (Chambers, 2000 = Barnhart, 1988)
[MW] Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 11th ed. (2008)
[研語源] 英語語源辞典[縮約版] (研究社, 1999)
[プチ仏] プチ・ロワイヤル仏和辞典 第4版 (旺文社, 2010)
研究社 羅和辞典 改訂版 (2010, CD-ROM版)
研究社 新英和辞典 (1994, 電子ブック版)
岩波書店 広辞苑第4版 (1991, 電子ブック版) など


★こんな所にラテン語が!編
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▼America
    [研語源] Americus Vespucius←Amerigo Vespucci(1454-1512:
    イタリアの商人・航海者); 1499-1504年の間に米大陸に3度渡航)。
    ドイツの地図制作者Martin Waldseemu:ller(1470?-?1522)が1507年に
    Cosmographia Introductio という論文で、この大陸を発見したという
    上記イタリア人の名にちなみ America と命名した。
*ある意味、これが衝撃度No.1でした。考えたこともありませんでした。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Amerigo_Vespucci
    http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Waldseem%C3%BCller
    http://en.wikipedia.org/wiki/Waldseem%C3%BCller_map
コロンブスより1年早く到達したと嘘をついたが、それが分かったのは18世紀で
もはや変更不能だったようです。それがなければコロンバ合衆国になっていた?

Canadaは北米インディアン語で 「"kana'da" village. 地名と誤解したことから」
[研語源]。

▼Copernicus
    天文学者。Kopernikのラテン語名。ポーランド出身、1543年没。
▼Nostradamus
    医師・予言者。Nostredameのラテン語名。フランス出身、1566年没。

*かの「予言書」はラテン語でなくてフランス語でした。
16世紀にはまだラテン語名の方が優勢だったのでしょうか?

▼bonus ボーナス、賞与
これがラテン語の bonus (良い) から来ているという話は、どこかで
目にしたのですが、その通りでした。
ラテン語の発音は「ボヌス」なのが、ちょっと惜しい。

    [OED] An ignorant or jocular application of L. bonus `good (man)',
    probably intended to signify a boon, `a good thing' (bonum).
    Prob. originally Stock Exchange slang.

    [Chambers] ... perhaps originally an ignorant or humorous application
    coined in traders' parlance of the London Exchange.


★第3変化動詞 lego
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この動詞こそ、子沢山のラテン語第一位だと思いました(接頭辞などは別にして)。
全く予想もしていないところにひょっこり現れ、本当だろうかと他の辞書も引き
比べると、否定されるどころかどんどん関連語が増えていく驚きの語でした。

まず『羅和辞典 改訂版』(研究社, 2010)の訳です。そもそも多彩な意味があります。
    1 集める, 拾い集める.
    2 盗む, 奪う.
    3 (帆・糸などを)巻き上げる.
    4 立ち聞きする, 見て取る.
    5 選ぶ;改訂する.
    6 通り過ぎる, 横切る.(追跡する)
    7 (海岸に沿って)航行する.
    8 読む;朗読する.
    9 読んで知る.

語源辞典には上記の何番目かは載っていませんので、そこだけ私が推測で
補いました(誤っているかもしれません)。

▼legion 軍団
    羅legio(軍団、大勢)~ 羅lego(1.集める)
*英league(リーグ、団体)は、Weekleyでは羅ligo(結ぶ)から。OEDは別の説。

▼legume マメ科植物、(その)さや
    羅legumen(豆のなる植物、豆, 豆類)~ 羅lego(1.集める)
    [OED] L. "legumen", from "legere" to gather, in allusion to the
        fact that the fruit may be gathered by hand.

▼colleague 同僚
▼college 大学
    羅colligo(集める、熟考する) = con-(共に) + lego(1.集める?9も?)

▼coil コイル、ぐるぐる巻く
    羅colligo(同) = con-(共に) + lego(3.巻き上げる)

*OED、研語源 はこの説について触れていません(1611年以前は詳細不明らしい)。

▼neglect 無視する、怠慢など
▼negligence 怠慢、過失
▼negligee ネグリジェ(女性用寝間着)
    羅neglego (無視する、怠るなど) = 羅nec(否定) + lego(1 or 3?)
    羅neglegens(無頓着な、だらしない)
     = neglego の現在分詞。legoしていない(状態)。

*「日本語の「ネグリジェ」はchemise de nuit」[プチ仏] 。
直訳すれば「夜のシャツ」でしょうか。
さらに「日本でいうシュミーズはcombinaison」(同)。
どうしてこんなことに???
*レギンス(leggings:スパッツ、脚絆)は、OEDでは足(leg)からに
なっていました。

▼elect, election 選挙(する)
▼elite エリート
    羅lectus(選ばれた、えり抜きの、上等な)
        = 羅lego(5.選ぶ)の完了分詞の男性単数主格「選ばれた(男)」
    羅eligo (引き抜く、選ぶ) = 羅ex-(~から) + lego(5.選ぶ)

*電気のelectricは、希electron(琥珀)から。静電気(実験)との関連。

▼diligent 勤勉な、入念な
    羅diligo(重んずる, 尊重する, 愛する)
        = dis-(分離?) + lego(1.集める or 5.選ぶ?)
    羅diligens(注意深い、入念な、質素な)

▼select 選択(する)
    羅seligo(選択する)= 羅se-(離れて) + lego(5.選ぶ)

▼sortilege くじ占い、魔法、妖術
    羅sortilegus(預言者、占い師)
        ~ 羅sors(くじ、運命、神託)
         + 羅lego(5.選ぶ、4.立ち聞きする,見て取る?)

▼legend 伝説、銘・凡例・説明文
    羅legenda(女性名詞:聖人伝)

*元はlego の動形容詞(受動+義務)の女性単数主格(中性複数主格?)でしょうか。
「lego されるべきもの」=(あなた[方]によって?)「読まれるべきもの」。
伊lege`nda は「略語表、凡例」(伊和中辞典)。
*英羅agenda=「羅ago(進める・行う・協議する等)されるべきこと」。
*英羅propaganda=「羅propago(後世に伝える、拡大する)されるべきこと」でも
あるけれど、元祖は1622年創設の羅(Sacra)Congregatio de propaganda fide、
旧・布教聖省(現・福音宣教省)@ヴァチカンでした。
    http://www.fides.org/eng/congregazione/index.html

▼legible <筆跡・印刷が>読みやすい
*lego(8.読む) + -(a)ble(出来る)のようです。
逆は英illegible(読みにくい)。

▼lesson 授業、レッスン
    羅lectio(集めること、選ぶこと、読むこと、読まれるもの、(ミサで読む)聖句)
        ~ 羅lego(8.読む)

*これは怪しいぞ、と思ったのですが、
    [研語源] (?a1200 Ancrene Riwle 英国国教会) 日課 (朝夕の祈祷の
    ときに読む聖書中の一部分)、学ぶべき事。c1300 学科、授業
とあり、「読む」繋がりで間違いありません(OEDでもOK!)。
*英listen(聞く)は、ゲルマン語族(?)の方から来ているようです。

▼lectern (教会の)聖書台、講義台
    http://en.wikipedia.org/wiki/Lectern
    後期羅lectrum
    羅lector (読者、朗読者、ミサで聖書を朗読する人) ~ 羅lego(8.読む)

▼prelection [OED] A public lecture or discourse
▼lecture 講義
    仏lecture (読むこと、読み方、読み物)
    羅lectura = lego の未来分詞の女性単数主格(中性複数主格)?

*「読まれんとする物」、「今日は教科書の○○ページから読みましょう」
という行為、のこと?もちろんかつては、教科書=聖書だったわけです。

▼intellect 知性、知識人
    羅intellego (知覚する、理解力を持っている)
        = 羅inter- (~の間に) + lego (9.読んで知る?)
    羅intellegens (理解力[知力]のある、識者)
        = intellego の現在分詞の男女中性単数主格。
         intellego している人・もの(単数)。
    羅intellegentia (理解、洞察力、概念)
        = intellego の現在分詞の中性複数主格。
         intellego していること?(複数)。

▼sacrilege 神聖冒涜(罪)、罰当たりなこと
    羅sacrilegus(聖物窃盗の、涜神の)
        = 羅sacrum (聖物、聖所)+ lego (2.盗む)

*残念ながら羅和辞典の6, 7の意味を残した単語は見つかりませんでした。
*レゴ・ブロックの LEGO は、デンマーク語の「よく遊べ(leg godt)」の
略だそうです。
    http://aboutus.lego.com/ja-jp/lego-group/the_lego_history/
    http://en.wiktionary.org/wiki/leg#Danish


★なるほど!、または、なんか変?な語
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▼ブロッコリー、ブローチ、出っ歯
    英broccoli=伊broccoloの複数、spike(s)→ 英broach
    英broach=brooch ~ 後期羅 brocca, [OED] spike, pointed instrument
        ~ 羅broc(c)hus=出っ歯の

*つまりブロッコリー(野菜)は、ブローチ(ピン留め)のピンが多数あるような
形をしていて、そのピンは元々出っ歯のことだった、と。
「突き出している」が共通項と言えなくもないですが、なんとも意外でした。

ブローチのピンが多数あるもの、と言ったらブロッコリーより栗の毬(いが)です。
    英bur(r) ~ 羅 burra (羊毛の粗末な生地)
OEDにもこの説が載っていましたが、unsettled (未解決)となっていました。
毛羽立っているイメージなのでしょうか?

ウニは
    英sea urchin (海 ハリネズミ) ~ 羅ericius(ハリネズミ)
だそうです(OED)。意味の関係は納得ですが、ericius -> urchin のような
一見似ていない語についても語源関係を特定する音・綴り変化の法則に
ついてはよく分かりません。

*「栗」については
    栗 chestnut ~ 羅castanea(栗)
    (打楽器)カスタネットcastanet = 西castan~a ~ 羅castanea(栗)
でした(赤と青の教育用ではなくて、本当のカスタネットの方です)。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88
OEDでは
    1647 Stapylton Juvenal 240, Castinettas, knackers, of the form of
    chestnuts used by the Spaniards in their dances.
が初出になっていました。[研語源]でも「その形の形容」となっています。

*羅millus (下のページの挿絵をご覧ください)
    The illustrated companion to the Latin dictionary and Greek lexicon (1849)
    http://archive.org/stream/illustratedcompa00richuoft#page/423/mode/1up
外向きの棘(スパイク)が付いた犬の首輪は昔からあったようです(空想でなく実在?)。
追い詰めた(噛みついてくる)獣から猟犬の首を守るため(!!)、とあります。
これもブロッコリー?(シェイ氏にこの首輪の名前を聞いてみたい)

▼ビーカー、ピッチャー
    (理科の実験器具)ビーカー beaker ~ 中世羅 bicarium
    (ビールなどの)ピッチャー pitcher ~ 中世羅 picarium, bicarium
    OED. 'drinking-bowl' = 希bicos

*読むまで気がつきませんでしたが、液体を貯めて注ぐ器具であること、また
注ぎ口の形も同じです(だから同一語源です、と言えるほど単純ではありませんが)。
「ピ」と「ビ」がどこかで入れ替わったようです。
*小学校か中学の国語の時間に、カード、カルタ、カルテが本当は同じ語だった、と
習ったことが今も印象に残っています。パピルス紙が大元でした。
    [Weekley]
    英card ~ 仏carte, 伊carta、羅charta ~ 希chartes (leaf of papyrus)
    英chart ~ 仏charte, 羅charta ~ 希chartes. cf. 独karte

▼グラフ様々
    photograph = 希phos(光)+ 希graphein(書く)。光画、つまり写真。
        *希photos = phosの単数属格。graph of phosでしょうか?
    cinematograph ~ 希cinema(動き)。動画、つまり映画。
        *希cinematos = cinemaの単数属格。graph of cinemaでしょうか?
    autograph ~ 希autographos = 希auto(by oneself)。署名
    digraph ~ 希di-(2つ)。二字一音, 二重音字。
    heliograph ~ 希helios(太陽)。太陽を撮影する機械、日照計など。
    calligraphy = 希calligraphia ~ 希callos(美)
    chalcography ~ 希chalcos(銅)。銅版版画。エングレービング。
    stenography ~ 希stenos (狭い)。速記術。
などなど沢山あります。どれもギリシャ語と組みです。

思わずあっ!と叫びそうになったのは一つだけ。
    pornography = 希 pornographos (writing of harlots)
        ~ 希porne = 英harlot
なんとこれもギリシャ語起源でした。
英和辞典を引いて、ええっと「花魁+画」なのか?!、とLSJ希英辞典を引くと
    pornographos, writing of harlots, Ath. 13.567b.
とありました。Ath.はAnthologia Graecaのことらしいのですが
よく分かりませんでした(そうだとすると恐らく図でなくて文です)。
OEDでの初出は1857年で"as a matter of public hygiene"(公衆衛生
問題として)医学事典(?)に掲載されたものでした。
図版の意味での初出は1864年のWebster辞典で、その解説には
"examples of which exist in Pompeii."とあったそうです。
ポンペイのLupanarにある壁画のことでしょうね。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Lupanar_%28Pompeii%29
    #英harlot, 羅lupanar (英brothel)は、ご自身で辞書を
    引いてください・・・。
[研語源]は更に詳しく、
    希porne の原義は「(奴隷や賄賂などとして)売られたもの」。
    ちなみに、英国における「ポルノ」の最初の作品は John Cleland,
    Memories of the Life of Fanny Hill (1749) といわれる。
とありました。

▼ユーラシア
    Eurasian = Eur(ope) + Asia + -an

*ひとしきり大笑いした後(社会の授業で聞いた覚えはありません)、OEDを
開くと、最初の意味はヨーロッパ人とアジア(インド)人の混血児の事でした
(1844年)。一つの大陸名としては1868年。

その頃の日本と言えば、ペリーの黒船1853年、ラフカディオ・ハーンこと
小泉八雲の来日1890年、小泉セツと結婚、一雄誕生1891年(日本での第一号
かは知りません。多分もっと昔からいたと思うのですが)。
ハーンは東大英文学講師を務め、その後任は漱石(1900~2年英国留学)。
漱石や岩波茂雄らに西洋古典学などを教えたケーベル先生は1893年来日。

日米間ですが『蝶々夫人』の初演は1904年。ひょっとして?と辞書を引いたら
Amerasian=Amer(ican)+Asian なんて語もありましたが、OED初出は1960年代。

▼レガッタ(ボート競技、競漕)
レガッタと言えば、テムズ川のオックスフォード&ケンブリッジ大の競漕が
元祖だと思っていました。しかし、なんと
    [Weekley] regatta. Orig. boat-race on Grand Canal of Venice.
ヴェネツィアが先でした。OEDの初出は1652年で、ヴェネツィア大運河で
開催されたそうです(それが初開催なのかは分かりません)。

ところがテムズ川の方の公式サイトにある歴史解説ページには
    http://theboatrace.org/men/origins
    http://theboatrace.org/men/report/early-races
この話は出てきません。それどころか regatta の語が全然出てきません。
Weekley(英国人です)は、1884年出版の英語辞典に、初回は "held on the 
Thames, June 23, 1775" とあると書いています。OEDでもそうです。
    [OED] The first English regatta was held on the
    Thames on the 23rd of June 1775: see the Annual Register
    for that year, pp. 133 and 216.
規模や参加者が違う(?)ので別物扱いなのかもしれませんが。

この件を調べるまでテムズ川の競漕もレガッタと言うのだと思っていましたが、
どうも私の勘違いで、"the boat race" と呼ぶようです。
では、早慶レガッタのレガッタはどこから伝わったのでしょう???
    http://www.the-regatta.com/?page_id=23
イタリア語(ヴェネツィア語)の regatta で呼ぶのをどこかで誰かが
止めたのでしょうか??

▼reject 拒否する、除く、(体が)受け付けない
    羅rejicio(投げ返す、追い返す、吐く、延期するなど)
        = 羅re-(後方へ、再び) + 羅jacio(投げる、放つ、口に出す)

*「こんな物は受け取れない」と親書を返送するとか(ちょうどその頃、
この辺りの電子化作業中でした)、ちゃぶ台をひっくり返すとか(怒り?)、
そういうこと、か?

*拒否権vetoは、羅veto(禁止する, 拒否する, 妨げる)からで、「共和政
ローマ時代に護民官が保持していた権限」(Wikipedia)、帝政では皇帝の特権。

*ミサイルmissile ~ 羅missiles(投げられる)、羅missile(飛び道具、
複数形missilaで (劇場などで観衆に投げられる)贈り物)、羅mitto(放つ、
投げる、断念する、派遣するなど)。

▼synagogue シナゴーグ
    synagogue ~ 希synagoge (assembly, bringing together)

*なぜユダヤ教の教会堂を示す単語がギリシャ語なのか?ユダヤ教だから
ヘブライ語じゃないのか?と思いつつ続きを読むと「ヘブライ語keneseth」の
訳だ、とありました。
70人訳聖書(羅Septuagint、旧約聖書のヘブライ語→ギリシャ語訳)で、同等の
意味を表すギリシャ語に置き換えられ、それが広まったためのようです。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Synagogue#Etymology_and_translations
イスラエルの人も「シナゴーグ」と呼んでいるのか?!と思ったのは、私の
早とちりでした。
    ヘブライ希羅英和聖書+辞書は、バイブル・パックとして公開しています。
    http://classicalepwing.sourceforge.jp/usage3.html

*現ルーマニア生まれのユダヤ教指導者にして言語学者 Ernest Klein による
英語語源辞典(1971)の序文が↓の最後(DEDICATIONS)にあります(心静かにどうぞ)。
    http://www.etymonline.com/abbr.php?allowed_in_frame=0
このサイトは参考になるのですが、様々な辞書の記述を混ぜてしまっているので、
辞書として参照するにはちょっと困ることがあります(著作権法上もちょっと?)。

▼template テンプレート
    template(テンプレート、型板) ~ templat (temple)
        ~ 羅templum(神殿)

*コンピュータの文書ファイルなどで、よく使う書式のひな形になる様なものを
テンプレートと呼ぶことがあります。
それがラテン語の神殿から来ているとは考えたことがありませんでした。
確かに、欧米の美術館・博物館・音楽ホールなどは、正面の基本デザインが
パルテノン神殿にそっくりです(そうでない物も沢山ありますが)。
ただOEDでは、Of uncertain origin. で、羅templumに英rafter(垂木、屋根を
支えるための木材)という意味があるとしています。
由来は分かっても、どういう関係なのかはよく分かりません。

*ボクシングで言うテンプル(こめかみ)英templeは、羅tempus(こめかみ)の
複数形temporaからのようです(OED)。

▼alto (音楽)アルト(低音の女声[歌手]など)
    [Weekley] It. alto, L. altus. High (of male voices).
    [広辞苑] 本来は「高い」の意で、テノールより高いからいう

*それで逆になったのか!と、ひとまず納得しましたが、どうも引っかかります。
OED では、1819年の初出で "The highest male voice, the counter-tenor"。
"The female voice of similar range, or the musical part sung by it" の
意味では1881年初出です。なぜ男声の意味が先なのでしょう?
    #male voice と言うからには、男が歌う事ですよね。
そもそも、アルトの音域を歌える男性歌手は稀です。
私の推測でしかありませんが、カストラート(男性去勢歌手)の存在が関係
しているでしょうか。17~18世紀頃に流行したものの、1870年代にイタリアと
ローマ法王が禁止したそうです(去勢手術を伴うので)。それで 1881年に
女性の alto 音域歌手誕生!となったら時代は合いそうです。でもそれなら
男声の意味のaltoの誕生は、もっとずっと早いはずです。
なぜ男声が関わっているのでしょう??
    http://en.wikipedia.org/wiki/Alto
にも語源解説があります。

*ソプラノは、伊soprano ~ 伊sopra(上に)とWeekleyもOEDも書いています。
[研語源]には羅super(上に)も出ています。

▼aria (音楽)アリア
    英aria ~ 伊aria ~ 羅aer(大気、大空、雲、霧)

*「オペラ・オラトリオなどの中の抒情的な独唱歌曲」(広辞苑)との関連が
全く分かりません。『伊和中辞典』には大気などの他に「風、微風」の
意味もあります。そよ風とか、霧に包まれるイメージなのでしょうか。

[研語源]には
    It. "aria" melody ((なぞり) ← L "modus" `melody, manner, mode')
    < VL. *arja(m) ← L "aera" (acc.) ← "aer" `air'.
とあります。途中の 羅modus は「拍子、調べ、旋律」などの意味があります。
語源学の記号の厳密な意味を理解していないこともありますが(<は発達、
←は派生)、やはりよく分かりません。airとmelodyは別のものでしょう。

OEDでは aria の項に、air の 19番目を見よ、とあるので見ると、1604年に
    a piece of music of this nature to be sung or played as a `solo,'
    with or without a distinct harmonized accompaniment; a melody.
という意味で air が使われ出したともあります。先の広辞苑っぽいです。
その一つ前の18番を見ると、"song-like music, melody." という意味でも
使われた例があり、いったい誰がそんな変な使い方を?、と見たら、初出は
1590年『夏の夜の夢』1.1.183でした(air - earで韻を踏んでいる?)。
    [OED] 1590 Shakes. Mids. N. i. i. 183
    Your tongue's sweet ayre
    More tuneable then Larke to Shepheard's eare.
    [Globe版テキスト]
    183 Your eyes are lode-stars; and your tongue's sweet air
    184 More tuneable than lark to shepherd's ear,
    185 When wheat is green, when hawthorn buds appear.
    [小田島雄志訳](ヘレナがハーミアの美しさについて)
    ・・・あなたの目は彼方の
    北斗星、あなたの舌は甘い調べ、麦は緑に、
    サンザシのつぼみがほころびるころ、羊飼いの耳に
    聞こえてくるヒバリよりも美しい音楽。・・・
更に『ヴェニスの商人』5.1.76でも。
    [OED] 1596 Merch. V. v. i. 76
    If they but heare perchance a trumpet sound,
    Or any ayre of musicke touch their eares. 
    [Globe版テキスト]
    75 If they but hear perchance a trumpet sound,
    76 Or any air of music touch their ears,
音楽の意味での air はこれらが最初のようです。
シェイクスピアには文句が言えませんね。しかも「ヒバリ(lark)よりも」。

当時既に 伊aria に音楽的意味があり、シェイクスピアがそれを英語に
取り込んだのかも知れません。でも、私はシェイクスピアが元祖で、
それがイタリア語(音楽界)に取り込まれたのではないかな、と思います
(根拠はありません。シェイクスピア&ヒバリだから、としか)。

*(伝染病)マラリアmalaria ~ 伊mal'aria = mala aria
~ 羅malus(悪い)+ 羅aer(大気) は納得です。
    [OED] 1740 H. Walpole Corr. (1820) I. 68 A horrid thing called
    the mal'aria, that comes to Rome every summer and kills one.
    この人か?↓(イギリスからイタリアへ旅行したときの手紙)
    http://en.wikipedia.org/wiki/Horace_Walpole

▼音楽用語 いろいろ
    ノクターン、夜想曲 nocturne ~ 伊noctturno
        ~ 羅nocturnus(夜の、夜に行われる)
        ~ 羅nox (夜)

    エチュード、練習曲 etude ~ 仏e'tude ~ 古仏estudie
        ~ 羅studeo(専念する、味方する、学問する)
        ~ 英study

    (打楽器)ティンパニ timpani ~ 羅tympanum (小太鼓など) の複数

*中高と吹奏楽部で打楽器担当でした。ラテン語の楽器名をそのまま今に
受け継いでいるのは、ティンパニくらいかもしれません(そもそも他の
楽器は近代の発明品ですし)。たいてい複数で使うので元から複数形で、
timpanies(?)とはならないのでした。
オルガンの歴史も古いですが、羅organumです。

▼guitar ギター
    guitar ~ 羅希cithara(↓)
    http://archive.org/stream/illustratedcompa00richuoft#page/170/mode/1up
これはリュートにそっくりです。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88
リュートは「琵琶とも祖先が同じ」とあります。アラビア圏にもあります。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Barbat_%28lute%29
これも起源が古そうです。


★こんな所にアラビア語が!編
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▼checkmate (チェスの)チェックメイト
    [Weekley] Arab. "sha_h ma_t", the king is dead.
    [ODEE] Pers. "sha_t ma_t" the king is helpless
    [OED] Arabic "sha_h-ma_t(a", the king is dead. 14,15世紀頃の文例あり。
    [Chambers] Arabic "sha_h ma_t", the king died
        (a misinterpretation of Persian "ma_ta" to die,
        for "mat" to be astonished), from Persian
        "sha_h mat" the king is astonished or stumped
    [MW] Arabic "sha_h ma_t", the king is left unable to escape. 14th cent.
    [研語源] Arab. sa_h [借入] Pers. sha_h king (in chess). a1300

*辞書によって微妙に異なりますが(アラビア文字のローマ字転写方法は複数
あります。上記はメール表記の都合上、若干変えています。正式表記は各辞書で
ご確認ください)、アラビア語起源は間違いないようです。
インド起源のチェスが中東経由でヨーロッパに広まったことが関係していそうです。
    #某80年代アニメの決めぜりふの英訳は、"You are already dead."
    http://en.wikipedia.org/wiki/Kenshiro
*露tzar(ツァーリ)は羅Caesar(カエサル、英シーザー)からです。
では sha_h (king) はどうなのでしょう?
    #ペルシャ語のIPA発音記号は↓にあります。
    http://en.wiktionary.org/wiki/%D8%B4%D8%A7%D9%87
    英語でも shah「 (王制時代の)イラン国王の尊称」。
    #某70年代アニメの人物名「シャア」はどうでしょう?
    シャルルマーニュ(カール大帝)仏Charlemagne ~ 羅Carolus Magnusか?
    仏char(飾りの付いた車・山車、戦車)の発音は「シャール」[プチ仏] 。
    キャスバルの略称ならキャシーとかチャーリーとかになりそう・・。
*マタドール(牛に止めを刺す主役の闘牛士)英仏伊西matador ~ 西matar(殺す)。
西muerte(死ぬ)、仏mort(死)あたりと、羅mors(死)、morior(死ぬ)は関係が
あるようです。アラビア語の ma_t (dead) は、どうなのでしょう?

*アラビア語のことは全く分かりません。あまり似ていなくても語源関係がある
こともあれば、似ているのに関係がないこともあるので簡単ではありません。
[研語源]の巻末に「見せかけの語源」(語源のようで語源ではない)として
    羅dies(日、一日など)と英day
    羅habeo(持つなど多義)と英have
    羅cura(注意、介護など)と英care
が載っていました。

*脱線ですが、英car(車)は羅carrus(荷馬車)からだそうです
(大元はケルト人(ガリア人?)たちの車)。
    http://public.oed.com/the-oed-today/recent-updates-to-the-oed/december-2012-update/transport-fever-new-entrants-and-the-latest-oed-appeals/
[研語源]にはラテン語では「Caesarがはじめてケルトの戦車について用いたと
いわれ」などとあります。
『ガリア戦記』1.3, 1.26では荷車のようです。
    http://archive.org/stream/illustratedcompa00richuoft#page/123/mode/1up
    http://www.lexilogos.com/latin/gaffiot.php?p=269

▼シャーベット、シロップ、コーヒー、アルコール
    英sherbet ~ 仏sorbet ~ トルコ・ペルシャ sherbet、アラビア sharbah
    英syrop ~ 仏sirop ~ 中世羅 sirupus ~ アラビア shara_b
    英coffee ~ 仏cafe' など ~ トルコ kahveh ~ アラビア qahwah
    英alcohol ~ アラビア al-koh'l

*気がついた語を書き出したら、なぜか全部飲み物でした。
*tea(茶)は中国起源。ペルシャ・ウルドゥーcha_、アラブsha_y、トルコcha_y、
露chai、仏the'、伊te`、西te、独theeなど。

▼denier (通貨単位)ディナール
    denier (dinar) ~ 羅 denarius (古代ローマの銀貨=銅貨10枚、後に16枚相当)

*ヨーロッパの方は EURO に移行してしまいましたが、かつてのローマ経済圏に
まだ残っているのが驚きです。その他の言語にもいろいろ残っているようです。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9
Weekley, OEDでは 伊denaro、西dinero が載っていました。


★シェイクスピアが作った単語
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ラテン語からは離れますが、英語(史)を考えるときシェイクスピアを抜きには
出来ないそうです。とは言え私は全くの素人ですので、2つだけ。
非常にくだらないレベルですが、どうかご容赦ください。

シェイクスピア全作品・語彙辞典・コンコーダンスは、シェイクスピア・パック
として公開しています。あわせてどうぞ。
    http://classicalepwing.sourceforge.jp/usage2.html

▼priceless
このどう見ても「値打ち無し」になりそうな語が「値踏みのできない,
きわめて貴重な」になったのは、シェイクスピアがそう作ったからでした。
使われたのはたった一度だけ、詩作の『ルークリース凌辱』の17行目です。
和訳が入手しづらいのですが、幸いネット上にありました。
    http://www.pu-kumamoto.ac.jp/~tosho/file/pdf/kb/16/1608.pdf
これの 176(5) ページ目の左
    神々は何と尊い富を彼に貸し与えたもうたことか、
    美しい妻を与えてくださったのだからと。
    [17] What priceless wealth the heavens had him lent
    [18] In the possess on of his beauteous mate;
つまり、ルークリース(羅ルクレティア)の美しさの意味、だったのでした。

ただ worthless, valueless については、いずれも「価値無し」で使っています。
valuable「高価な、貴重品」で、invaluableは "That cannot be valued" (OED)、
「評価できないほどの, 非常に貴重な」という語もありましたが、1576年初出で
シェイクスピアは使っていません。

詩なので、priceless wealth (-ス-ス-ス)で韻を踏みたかったとか、invaluable
よりもpricelessの方がキラッとした響きがするとか??
わざわざ単語を作った理由が何かありそうです。

▼puke <俗>吐く
ある映画で、エレン・ペイジが「(緊張しすぎて)吐く」の意味で
"I'm gonna puke!" と言います(デビュー戦直前に円陣で1回だけ)。
    http://www.imdb.com/title/tt1172233/quotes?qt=qt0993958
音(ピューク)のイメージで何となく印象に残っていたのですが、これも
シェイクスピアでした。やはり1回だけ。
    #OEDはこの説を認めつつも、その前にも用例があるとしています。
    ただ少なくとも明確な用例の初出は(今の所)シェイクスピアです。
いったいどんな場面かと『お気に召すまま』(小田島雄志訳)2.7.146を探すと、
なんと、かの有名な件でした。

    この世界はすべてこれ一つの舞台、
    人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ、
    それぞれ舞台に登場してはまた退場していく、
    そしてそのあいだに一人一人がさまざまな役を演じる、
    年齢によって七幕に分かれているのだ。まず第一幕は
    赤ん坊、乳母に抱かれて泣いたりもどしたり。
    [Mewling and puking in the nurse's arms.]
    次は泣き虫小学生、・・・・

「ミュー」して「ピュー」を「ナーse」の「アーms」に?!
[Chambers]には "now generally avoided in careful speech or writing" と
ありますが、その責任はシェイクスピアには無いと思います。

シェイ氏の本にも、upchurk の項があります。
    [OED] to vomit. Since c 1925. ... Considered a smart and
    sophisticated term c 1935
だったそうですが、
    言語変化の定番ともいえる例で、現在、この単語にはそういった
    気品はまず感じられない
なんだとか。

ちなみに真っ当な語の英vomitは、やはり伝統と格式のラテン語vomitus([医]嘔吐)、
vomo(吐く)からでした。


★Wednesday 問題
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中1の頃からずっと疑問だったことがあります。
どうして Wednesday は Wednesday と書くのでしょうか?
なぜ「ウェ・ン・ズ・デー」なのに、We-n-des-day でなくて、We-d-nes-day なので
しょう?綴りや発音の時、いつも引っかからなかったでしょうか?
全文完走間近のある日、突如分かりました。
Wednesdayは、元々アングロサクソン語(英語の先祖)の Wodnesdaeg "day of Woden"
だったのでした。これなら d-n でも納得です。
Wodenとは、北欧神話の最高神オーディン(Odin)[独ヴォータン(Wotan)]のことです。

他の曜日も読み返すと、日曜・月曜が太陽・月なのはいいとして、
    火曜  Tuesday    テュール(Tyr)[軍神]の日
    水曜  Wednesday   オーディン(Odin)[最高神]の日
    木曜  Thursday   トール(Thor)[雷神]の日
    金曜  Friday    フリッグ(Frigg)[Odinの妻、愛と結婚の女神]の日
    土曜  Saturday   サトゥルヌス(Saturnus)[ローマの農耕神]の日
でした。なぜか土曜だけがローマの神で、火~金は北欧神話の神々です。
ラテン語ではどうだったかというと、
    日曜  solis dies  太陽の日
    月曜  lunae dies  月の日
    火曜  Marties dies 軍神マルスの日
    水曜  Mercurii dies 商売の神メルクリウス(希ヘルメス)の日
    木曜  Jovis dies  最高神ユピテル(希ゼウス)の日
    金曜  Veneris dies ウェヌス(英ヴィーナス)の日
    土曜  Saturni dies サトゥルヌスの日
で、イタリア語・フランス語もこれを受け継いでいるようです。

いつの間に北欧神話が紛れ込んだのかと OED を見ると、どうも10世紀か11世紀
ごろのようです(単に文字資料が残っているのが、この頃が限界なだけかも
しれません。OEDの正しい使い方を理解しているわけではありません)。
その頃のイングランドと言えば、ノルマン人とかヴァイキングの時代で、彼らは
北欧神話の民だったかと思います。火~金の神は、ローマの神々から北欧神話の
神々に置き換えられた様に見えます。偶然とは思えません。

その地を治めた誰かが曜日名を変更したのでしょうか?
だとすると、当時の曜日の呼び方がローマの神々由来だと、つまりラテン語や
ギリシャ・ローマ神話を解する人がその地にいたのでしょうか?
これは一体何が起こったのでしょうか?
Wednesday の綴りに納得出来るまでに20年以上かかりました。
そのうちどこかで分かるといいのですが。


もっといろいろあるのですが、長くなるのでこの辺で(既に長過ぎ?!)。
来年は、Cunliffe のホメロス辞典に挑みます。
では。

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