Linux 3.7リリース、目玉はARMアーキテクチャサポートの強化

 Linux Torvalds氏が12月10日、Linuxカーネル3.7をリリースした。64ビット版ARMのサポートや、ハードウェアが異なるARMシステムでも同一のカーネルでブートが可能になるなど、ARM関連機能の強化などが大きな特徴となる。そのほか、SMB 2.0のサポートやファイルシステムBtrfsなども引き続き強化されている。

 10月初めに公開されたカーネル3.6以来、約2か月ぶりのリリースとなったLinuxカーネル3.7では、ARM関連の「マルチプラットフォーム」対応が特徴となる。これまでARMハードウェアはそれぞれにカスタマイズされたカーネルを必要としいてたが、本バージョンでは単一のカーネルで異なるハードウェアのサポートが実現された。また、64ビット版ARMプロセッサ(ARM v8)にも対応した。64ビット版ARMでは32ビット版ARMのコードも実行できるが、64ビット版では命令セットが完全に新しくなっているという。64ビット版ARMプロセッサは現在開発中の段階だが、2013年以降に市場に登場すると見られている。

 また、署名付きカーネルモジュールもオプションでサポートされた。この機能を有効にすると、正しいキーで署名されたカーネルモジュール以外はroot権限があってもロードできなくなるという。この機能はセキュリティの強化に有効とのことで、たとえばrootkitなどのインストールを防ぐためなどに利用できる。

 ファイルシステム関連では、現在実験的サポート段階にあるファイルシステム「Btrfs」サポートの強化がある。ファイル同期API(fsync)の高速化や、同じディレクトリ内に20以上のハードリンクを作成できないという制約が緩和された。これにより、Firefox、qemuなどのアプリケーションの速度が改善するという。そのほか、Windows Vistaで加わったSMB(Server Message Block)2.0プロトコルの実験的サポートやNFS v4.1の正式サポートなども行われている。これにより、LinuxファイルサーバーやLinuxベースのNASデバイスとWindows PC間のファイル転送が高速化するという。なお、Linuxカーネル3.6のリリース時にもSMB 2.0のサポートは触れられていたが、それは誤りであり、実際にはLinuxカーネル3.6ではSMB 2.0関連の機能は利用できないという。

 ネットワーク関連では、Linuxカーネル3.6においてクライアント側でのサポートが行われたTCPコネクションの確立を高速化する技術「TCP Fast Open」がサーバー側でもサポートあれた。これによりWebページの読み込み時間を4〜41%改善できるとしている。性能監視ツールでは、追跡ツールperf-traceや仮想化の性能モニタリングのためのイベント分析ツールperf-kvmなどが加わっている。

 このほか、グラフィック、ドライバ、セキュリティなどで多数の機能強化が加わっている。Linuxカーネルのソースコードはkernel.orgやそのミラーサイトからダウンロードできる。ライセンスはGPLv2。

kernel.org
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