大幅な改良が施されたVLC 0.9.2

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 VLCを使っていると、ときおり、全機能の5%ぐらいしか知らないのではないかと思わせられることがある。ご存じのように、VLCはフリーかつクロスプラットフォームの頼りになるメディア・プレーヤーだ。しかし、最新版0.9.2のリリース・ノートを見ると、サーバー、ネットワーク・ストリーミング、変換など、私がこれまで使ったことのない機能がずらっと並んでおり目まいがするほどだ。最新版VLCはメディア再生機能より、そうした機能の方がはるかに多いのだ。

 videolan.orgにはソース・コードのほか、Windows用バイナリーとMac OS X用バイナリーが用意されている。だが、Linux用のビルドを手に入れるのは簡単ではない。VideoLANは各ディストリビューションのパッケージ・システムを介してVLCを提供しており、できたばかりの0.9.2はまだほとんどパッケージ化されていないのだ。

 しかし、お使いのディストリビューション用にコンパイルされた公式または非公式のビルドが存在する可能性は高い。まず、ディストリビューションのメーリング・リストやフォーラムを、次にVideoLANフォーラムを探してみよう。見つからなくても心配は無用。自分でコンパイルすればよい。ビルドの仕方はVLCのwikiにある。

外部仕様の変更点

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VLC 0.9.2

 違いとして最初に目につくのはインタフェースだろう。wxWidgetsベースだったデフォルト・インタフェースがQtに変更されている。これまでのリリース同様、デフォルト以外にもさまざまなタイプのインタフェースで起動することができる。たとえば、コマンドライン、ncurse、マウス・ジェスチャー、キーボード専用、Webアプリケーション(ポートは8080)、お好みならWinamp風ビットマップ「スキン」もある。

 メニューとツールも再編された。ViewメニューとSettingsメニューは統合してToolsに、メニュー「File」の名称はその内容にふさわしくMediaに変更。また、最上位のメニューに、PlaybackとPlaylistが追加されている。Playbackには、ブックマークやタイトル/チャプターの検索などナビゲーション用の項目が並んでいる。

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新しいプレイリスト

 Playlistモジュールは、伝統的なオーディオ専用プレーヤー(AmarokやRhythmbox)に似た機能を持っており、音楽ライブラリーの閲覧、検索、メタデータとアルバム・アートの取得などが可能。ShoutcastとLast.fmを直接サポートしている。それ以外のネットワーク・サービスについても、Luaベースの強力なスクリプティング・エンジンを使ってハンドラーを書けば利用は可能だ。例として、YouTube、Google Video、Metacafe、DailyMotion用のスクリプトが同梱されている。

内部仕様の変更点

 このリリースでサポートされているトランスポート・プロトコルとコーデックは、実に多い。プロジェクトのwikiにある一覧を見てほしい。主だったものでは、VP6、Monkey Audio、ATRAC3、video4linux2、JACK(オーディオ)、MIDI(シンセサイザー)、TiVo(録画)などに対応している。そのほか、多くの形式が改善されており、字幕、クローズド・キャプション、チャプター、タグなどの機能が追加された。

 VLCには効果のフィルターが搭載されており、コーデック、コンテナー、ソースの場所にはよらず、オーディオやビデオを効果をつけて再生することができる。今回のリリースでは、新たにビデオ・フィルターが9種、オーディオ・フィルターが2種追加された。彩度補正やガンマ補正などの標準的な画像補正のほか、モーション・ブラーや回転などの特殊効果、さらにはビデオをマス目に分割して入れ替える「パズル・ゲーム」といった単に面白さだけを狙ったものもある。

 VLCのフィルター・コレクションは壮観だ。また、オーディオの音量調整や透かしで入っているロゴを削除するフィルターなど、ビデオの編集に便利なものもある。

変換機能

 VLCは変換ツールとして使うこともできる。メディアの再生以外にも、さまざまなネットワーク・プロトコルでオーディオやビデオをストリーミングしたり、コンテンツのコーデックやコンテナー形式を変換したりすることもできるからだ。

 主要なOSにはすべて専用のビデオ変換ユーティリティーが付属しているが、VLCに組み込まれている変換ツールは私の知る限り最も使いやすい。多数あるコマンドラインの引数やフラグを調べて変換フィルターに指定する必要がない。そうしたことはすべてVLCがやってくれる。再生機能があるので、あらかじめ入力ファイルの設定を詳しく調べることもできる。これはドラッグ&ドロップ型の変換ツールにはまねができない。

変換でもストリーミングでも、メディア・セレクターは再生のときと同じものを使うのだが、このセレクターもVLCの特長の一つだ。Open File、Open Disc、Open NetworkからConvert/SaveやStreamingまで、Mediaメニューにあるすべてのオプションが統一されたインタフェースを持ち、各オプションにふさわしい設定項目が表示されるので、設定しやすい。要するに、ビデオをローカル・ストレージに保存したいだけなら、RTSPの仕組みを知らなくても問題なく可能だということだ。

欠点

 プレイリスト機能を搭載しユーザー・インタフェースを再編したお陰で、VLC 0.9.2は最も使いやすいオープンソース・メディア・プレーヤーに向かって大きく前進した。しかし、欠点もある。たとえば、オーディオとビデオのフィルターを使うには、メニューからTools→Extended Settingsを選んでAdjustments and Effectsウィンドウを開かねばならない。また、プレイリストを開くのに、Playlist→Show PlaylistとTools→Playlistと、なぜか2通りの方法がある。さらに、私としてはVLC機能をすべて1つのウィンドウに収めてほしいと思うのだが、現在のVLCでは、再生、プレイリスト、効果、ブックマーク、メディア情報がそれぞれ独自のウィンドウを持っているため使っているうちにウィンドウが錯綜してしまう。

 と重箱の隅をつついてはみたものの、VLCはMPlayerやXineより使いやすく、機能の提示の仕方に一貫性がある。インタフェースは操作の邪魔をせずチュートリアルを見なくても使えるほどだ。VLCは黙々と動いてくれる。その上、3大デスクトップOSのいずれでも問題なく動作するという事実もある。となれば、VLCはやはり最高のメディア・プレーヤーということになるだろ。

Linux.com 原文(2008年9月26日)