堅牢で実用可能なOpenSolaris 2008.05

 ここ数年、Sunは自社ソフトウェアのオープン化に本格的に取り組むようになってきた。その最新の成果は、LinuxやBSD同様のオープンソースUnixオペレーティング・システムでこの5月にリリースされた OpenSolaris だ。試用したところ、デスクトップにもサーバーにも十分使えるOSだった。

 OpenSolarisはSunのCommon Development and Distribution License(CDDL)の下でリリースされている。このライセンスはLinuxに適用されているGNU Public License(GPL)と互換性がなく、したがってOpenSolarisに使われている多くの技術がすぐにもLinuxに波及する見込みはない。また、完全なフリーでもなく、一部のコンポーネントはOpenSolaris Binary Licenseの下でバイナリー形式でのみ提供される。

インストール

 OpenSolarisはライブCDの形で提供されている。したがって、まずインストールなしでCDから直接起動し、起動後ハードディスクにインストールする。筆者はISOイメージをダウンロードしてCDに焼き、テスト・マシンで起動した。なお、OpenSolarisを起動して実行するには、AMDまたはIntel製の最近のCPUと512MB以上のメモリーが必要だ。

 起動は簡単だった。途中入力する必要があったのはキーボードの種類とデスクトップ言語を指定するときの2回だけで、あとは何ごともなく進行しデスクトップが表示された。OpenSolarisはGNOMEデスクトップ環境を採用しており、このリリースではGNOME 2.20.2だった。

 OpenSolarisを少し触ってみようというだけの場合は、この状態で試用することができる。CDから通常と同じように使える。筆者はインストールしたかったので、デスクトップにある「Install OpenSolaris」ツールを使ってインストールした。

 インストールは、グラフィカル・インストーラーが案内してくれる。OpenSolarisをインストールする場所(ここで指定したパーティションまたはディスクにあるデータはすべて削除されるので注意)、タイムゾーン、デフォルトの言語サポート、ロケールに対応した日付形式を指定する。そして、rootパスワードを設定し、ユーザー・アカウントを1つ作成し、ホスト名を指定して完了する。インストール手順については多くの解説書が用意されており、VirtualBoxの下でインストールする方法やデュアルブート・システムにする方法などの解説もある。

試用

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OpenSolaris Package Manager

 OpenSolarisのデフォルト・インストールには、Firefox(2.0.0.14)、Thunderbird(2.0.0.12)、GIMP(2.4.1)など、よく知られたアプリケーションはあったが、意外なことに、OpenOffice.orgは含まれていなかった。自社のStar Officeもない。

 アプリケーションの追加はPackage Manager(System→Administration→Package Manager)で行う。OpenSolarisのパッケージ・リポジトリーには、各種コンパイラー、Apache Webサーバー、MySQLデータベース、PHPなど、10,000を越えるパッケージが用意されている。そこで、OpenOffice.orgをインストールしようとしたのだが、このとき初めて問題に遭遇した。

 OpenSolarisは、通常、Network Auto Magicというサービスを使ってネットワーク・インタフェースを自動的に構成し、DHCPでアドレスを取得する。筆者のホーム・ネットワークでもこれが機能するはずなのだが、どういうわけかDNSサーバーを発見することができなかった。そのためPackage Managerはサーバー名を解決できず、したがってインターネットに接続できなかったのだ。

 やむを得ず、/etc/resolv.confにネーム・サーバーを追加し、/etc/nsswitch.dnsを/etc/nsswitch.confにコピーした。DNSが使えるようになると、OpenOffice.orgは簡単にインストールすることができた。

独自機能

ZFS
 従来のファイルシステムは1つのハード・ドライブあるいはパーティション上にあるので、複数のハード・ドライブにまたがるファイルシステムがほしい場合は、RAIDかボリューム・マネージャーのいずれかでつなぐ必要があった。

 これに対して、ZFSはzpoolと呼ばれる仮想ストレージ・プール上に構築される。zpoolは仮想デバイスから成り、その仮想デバイスは物理ハード・ドライブ(またはファイルまたはパーティション)から成る。仮想デバイス内のハード・ドライブは冗長構成(RAID)などいくつかの方法で構成可能。したがって、システムにストレージを追加するということは、ハード・ドライブを追加しそのドライブをシステム・ユーザーが使えるようにするということではなく、その容量をzpoolに加えるということになる。

 OpenSolarisには、ZFSやDTraceなど、ほかには見られない技術が搭載されている。業務利用には有用な機能だ。

 Zetabyte File System(ZFS)は巨大なストレージ容量のために設計された強力なファイルシステムで、ファイルシステムとボリューム管理とRAIDを統合したもの。この点で、ext3やNTFSのようなファイルシステムを超えている。

 DTraceはシステム探査ツールだ。システムの動作を知り、ソフトウェアの各層を通してパフォーマンス問題を調べ、異常動作の原因を特定することができる。詳細な説明は、Solaris Dynamic Tracing Guideをご覧いただきたい。

なぜOpenSolarisか

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Device Driver Utility

 OpenSolarisを試用していて、LinuxではなくなぜOpenSolarisなのだろうかと自問してみた。デスクトップについては、説得力のある答えはあまり思いつかなかった。OpenSolarisもLinuxもGNOMEを使っている(使える)から使い勝手に大差があるはずもない。動作するアプリケーションも同じようなもので、人気のあるオープンソース・アプリケーションはどちらでも使える。しかし、OpenSolarisは、Nvidiaグラフィックス・カードなど、広範なハードウェアのサポートに努めており、ドライバー問題を解決するためのDevice Driver Utilityも提供している。

 一方、サーバーの領域では、少し事情が異なる。OpenSolarisにはZFSとDTraceがあるからだ。それがなければ、評価はデスクトップの場合と同じようなものだろう。LinuxでもOpenSolarisでも、iSCSIやXenなどの比較的新しい技術を含めて主なネットワーク・サービスが使えるのだ。しかし、ZFSはLinuxでは事実上使えない(FUSE実装があるが)。FreeBSDなどのオペレーティング・システムでもまだ実験段階だ。ZFSをサポートするOpenSolarisは、それゆえに関心を引く選択肢となる。

商用サポートと今後

 OpenSolarisを業務で使う場合、Sunのサポートがほしいこともあるだろう。現在、SunはすべてのOpenSolarisリリースに18か月の商用サポートを提供している。これに対して、CanonicalのUbuntu Long Term Support(LTS)には、デスクトップでは3年間、サーバーでは5年間の商用サポートがある。Sunの商用サービスは、団体によっては期間が短すぎるかもしれないが、そこそこのサービスではある。

 OpenSolarisの次期リリースは11月に予定されており、ネットワーク・インストール、GNOME 2.24、代替デスクトップ環境としてKDE 4.1、OpenSolarisのホストをiSCSIのターゲットにするための基盤機能などが搭載される。オンライン・リポジトリーから利用できるWebスタックも改善される。また、Web開発フレームワーク(RailsやDjangoなど)とコンテンツ管理フレームワーク(Zope、Plone、Joomla!、Drupal、SilverStripeなど)のそれぞれ人気上位10種のほか、wikiやブログのためのフレームワークも提供する計画がある。

まとめ

 OpenSolarisはGPL非互換なライセンスでリリースされているため、そこに含まれる重要技術の一部はSolarisの世界に抱え込まれたままだ。オープンソース純粋主義者は、そうしたライセンスやパッケージのあり方を嫌うだろう。しかし、もう少し現実的であれば、OpenSolarisはよい選択肢になるだろう。特に、サーバーで使う場合は検討に値する。

Gary Sims 英国の大学からビジネス情報システムの学位を授与されている。ソフトウェア・エンジニアとして10年間勤め、現在はフリーランスのLinuxコンサルタント、ライター。

Linux.com 原文(2008年9月16日)