FSFが模倣品・海賊版拡散防止条約に反対の立場を表明

 模倣品・海賊版拡散防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement:ACTA)をどの国が調印するかはまだ誰も知らないが、不穏な兆候が散見されることから、Free Software Foundation(FSF)は予想される事態への注意を広く喚起するためにキャンペーンを開始した。FSFキャンペーン・マネージャのMatt Lee氏によると、ACTAは「恐怖と疑惑の土壌を生む」ものであり、最悪のシナリオの場合フリーソフトウェアに悪評を与え、悪者に仕立て上げる危険性がある。

 ACTAは、オーストラリア、カナダ、EU、日本、メキシコ、ニュージーランド、韓国、米国によって交渉が進められている条約である。名前こそ"模倣品・海賊版"拡散防止条約であるが、実際の主な関心事はブランドネームを模倣品から保護することに留まらず、いわゆる知的財産権を保護することにもある。よって、恐らくコンピュータのハードウェアとソフトウェアも適用対象となるだろう。

 問題は、交渉内容が秘密のため、ACTAの正確な対象範囲と各条項の素案がほとんどわからないことである。ただし、「Discussion Paper on a Possible Anti-Counterfeiting Trade Agreement(模倣品・海賊版拡散防止条約の素案に関する論文)」なる文書が2007年10月に書かれ、2008年5月22日にWikiLeaksにアップロードされている。その内容は、警戒を抱かせるには十分なものだ。

 この無署名の論文は、極めて保守的な論調で「知的財産権の侵害」について語っている。模倣品といわゆるインターネット海賊行為という概念を一緒くたにすることで、この論文は、知的財産権の侵害が企業収益の喪失をもたらし、イノベーションを阻害し、消費者の健康と安全を脅かし、組織犯罪の資金源となり、税収を減少させると主張する。これらの不正と闘うため、条約調印国は互いに協力するだけでなく、国内法と執行ポリシーの歩調も合わせるべきであるというのが、この論文の提案である。

 ポリシー案として挙げられているのは、関連法を権利保有者からの訴えなしで執行すること、国内および国境において侵害に関わる「物品と設備」を押収・破壊すること、単一の当事者からの要求により調査し、侵害の容疑者を権利保有者に通知すること、などである。

 フリーソフトウェアのコミュニティに特に関係があるのは、「著作権所有者による技術的な保護措置を迂回する行為に対する救済策および迂回機器の追跡方法」の開発、なる一節だ。言い換えれば、ACTAはデジタル著作権管理(DRM)に法的根拠を与え、DRMを無効にする行為を違法化する可能性がある。

 これらの提案は、全米レコード協会(Recording Industry Association of America:RIAA)や米映画協会(Motion Picture Association of America:MPAA)などの団体の買い物リストに実によく似ている。どちらの団体も、米国やその他の国々で同様の措置を求めて長年ロビー活動を続けている。事実、RIAAはACTAにこのような条項を含めるように活発なロビー活動を展開しているのだ。米国外の読者は、この問題を既に扱っている世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization:WIPO)、国連などの国際組織の頭越しに、なぜアメリカの団体が法律の作成を手伝うのか不思議に思うかもしれない。