OpenOffice.org 3.0を試してみた

 OpenOffice.org 2.4がリリースされたばかりだが、OpenOffice.org 3.0(OOo3)もすでにフィーチャーフリーズを終えていて9月にリリースされる予定となっている。そこで今回OOo3にどのようなことを期待できるのかを知るために最近の開発版ビルドを試してみたところ、Base、Draw、Mathの各アプリケーションについては、少なくともこれまでのところは変更はほとんどないようだった。しかしWriter、Impress、Calcといった中心的なプログラムについては、長らく待たれていた新機能のいくつかが登場しつつあり、2.4リリースの大きな特徴となっているChartの改良とも相まって、ユーザビリティと機能性の両方を向上してくれそうだ。ただし、まだ十分とは言えない新機能もあった。

 OOo3開発版ビルドのパッケージはOpenOffice.orgプロジェクトのミラーサイトの/developer/DEV300_m3ディレクトリか、またはPavel Janik氏のサイトからダウンロードすることができる。このパッケージはすでにインストールしてある別の版のOOoと並行して利用することが可能だが、OOo3では他の既存の版が読み取ることのできないOpen Document Formatのバージョン1.2を使用しているので、開発版ビルドと他の版との間でファイルのやり取りはしないようにした方が良いだろう。また最近のビルドはかなり安定してきているものの、より新しい版についても同様に安定しているとは思わない方が無難だろう。

変更点

 OOo3を起動するとまず最初に、以前の版のように灰色の空の編集用ウィンドウが開くのではなく、主なアプリケーションを起動するためのアイコンがいくつか表示される――まず最初にFile(ファイル)メニューを開くことを思いつかないかもしれない初心者のためにはずっと便利なデフォルト設定だ。その他の新機能としては、共同編集の際に自分の行った変更に対してパスワードをかけて保護することができるようになったことや、ImpressとDrawからスキャナを利用することができるようになったことなどがある。とりわけデザイナーにとっては、PostScriptベースのOpenTypeフォントのサポートには期待が持てるところだろう。またInsert(挿入)メニューの中に改行しない空白やハイフンを挿入するための項目が追加されたので、キーボードのショートカットを覚えるのが苦手な人にとっては嬉しいかもしれない。

 ワードプロセッサのWriterにも、小さいが重要な変更点がいくつかある。例えば文書を部分的に異なる言語で書く人にとって便利なこととして、これまではスペルチェックを実行すると、別言語で書いた段落はチェックされずに段落ごと飛ばされていたが、Language(言語)サブメニューから段落ごとに言語設定を変更することができるようになった。

 また別の大きな変更点として相互参照機能の向上がある。これまでは参照元をハイライトして名前をつけるといった手間がかかっていたが、その必要がなくなって、見出しやブックマークや番号のついた段落から選択することによって相互参照を追加することができるようになった。これにより他のワードプロセッサと並んでWriterでも、相互参照する可能性がまさにもっとも高いそのような要素を簡単に指定することができるようになった。ただし残念なことに相互参照の作成に必要以上の手間がかかることは相変わらずで、参照パターン(例えば「詳しくは~を参照」など)の保存など、作業を簡単にするための機能はまだ実現していない。

 とは言えWriterのもっとも重要な変更点はView(表示)→Zoom(拡大/縮小)→Columns(コラム)の追加だ。この新たな形式のビューでは、数多くのページを好きなだけ並べて表示することができる。特に便利なのはBook Mode(書籍モード)で、このモードを有効にすれば、最初のページはそのページだけが右側にあり、それ以降のページは2ページずつの組で並んだ、ちょうど書籍になったときの状態で文書を表示することができる。これまでにもFile(ファイル)→Page Preview(ページのプレビュー)を選択すれば2ページを組で広げた状態で表示させることはできたが、調整が必要なうえ、その状態では編集することができなかった。しかしBook Mode(書籍モード)のおかげでデザイナーが気にしなければならない余分なことが一気に減って、文書のデザインがずっと簡単にできるようになった。

 スプレッドシートのCalcにもいくつかの変更点があるが、Writerに比べれば小規模なものが多い。例えばCalcでは列の最大数が256から1,024に増えて、Microsoft Excelと同等になった。とは言え、特にそれほど多くの列が必要なのであればほぼ確実にスプレッドシートからデータベースに移行した方が良いだろうということを考慮すれば、平均的なユーザにとってこの機能がどれほど便利なのかについては疑問だ。

 Calcの上級ユーザならおそらく、Solverが新しくなっていることに気付くだろう。新しくなったSolverでは関数を最小化/最大化する値を求めることができるだけでなく関数が指定した値になるような値を求めることもできるようになった。より重要なこととして、追加の制約条件をメインのダイアログウィンドウ内で入力することができるようになったので、新たなダイアログを開く以前の方法と違って、すでに入力した制約条件が分かりにくくなってしまうことがなくなった。

 さらにCalcでは、ハイライトが黒一色ではなく半透明になった。これは小さな変更点ではあるが、これまでは選択したときの表示が選択部分の文字については読みにくい背景が黒の反転色で表示されて、他の部分についても分かりにくい表示になってしまっていたので、それが改善されたということだ。この変更のおかげで作業場所が非常に分かりやすくなったので、他のアプリケーションも同じようなハイライト方法になれば良いと思う。

 とは言え、これまでのところ全アプリケーションにおいて最大の変更点はおそらく、スライドショーアプリケーションのImpressに表機能が導入されたことだろう。表がサポートされていなかったことは、ImpressがMicrosoft PowerPointに及ばない理由の一つとしてこれまで必ず挙げられていた点であり、また表の各セルのために手で四角を描くという対処法も時間がかかるうえ面倒だった。新たな表機能としては、Writerでの表の作成に使われているものによく似た移動可能なツールバーや、Task(タスク)枠の中にある、数十種類の既定の書式が用意されている新たなTable Design(表設計)トレーなどがある。

 ただやや気になることとして、デフォルトの書式が色付きのセルになっているので、HTMLに慣れている場合には、スライドショーで複雑な書式の表を作成する際にやや手間取る時がある。さらに言えば、表を入れ子にできない点にも同様の不満を感じる。とは言えOOoの描画ツール――特に文字枠――を使用すればそのような問題を緩和することができるので、表のサポートがあるということだけでも大きな前進だ。

今後の予定

 OOo3で導入が予定されている機能は以上に紹介したものがすべてではない。Macユーザにとっての大きなニュースは、OOo3がXウィンドウシステム上ではなくネイティブに実行できるようになることだろう。またMicrosoft Officeの最新版のユーザとファイルをやり取りする必要のあるユーザにとっては、新しいOOXML形式のための変換フィルタが利用可能になるのが嬉しいかもしれない(ただし単純な文書であればOOo 2.3でもOOXML形式の文書の読み込みはすでに可能ではあった)。

 当初OOo3は、オフィスプログラムと一緒に利用可能なOutlookクローンに対して高まりつつある需要に応えるためにMozilla Thunderbirdとバンドルされることになっていた。しかしこれまでのところは、開発版ビルドにそのことを示すような予兆はなかった。また噂されていたようなPDF文書の編集機能についての予兆も見られなかった。

 現在のビルドからOOo3を判断するのはおそらく早計だろう。しかしこれまでのところから判断すると、大規模なインターフェースの再設計や何十という新機能が導入されたOOo2ほどの劇的な変化はOOo3には少ないようだ。けれどもそれは良いことなのかもしれない。インターフェースを新しくするような場合、ことによるとMicrosoft Officeの例のようにツールバーやメニューをリボンに変えてしまって、結果的には評判が悪いということも起こりがちだからだ。

 その他の機能についてはまだ現在の開発版の後にも最終版までには数多くのビルドがリリースされるはずなので、今の時点でははっきりしたことは言えない。しかしたとえこれ以上の新機能は追加されなかったとしても、すでに実装されている機能だけを考えてもOOo3は間違いなく嬉しいリリースになりそうだ。

Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文