「SharePointの急激な導入拡大に管理が追いついていない」――調査会社が指摘

 CMS(コンテンツ管理システム)市場分析がメインの調査会社、米国CMS Watchは、大企業内で急激に導入が拡大しているMicrosoftのコンテンツ管理プラットフォーム「Microsoft Office SharePoint Server」について、導入企業のIT部門がその利用をコントロールしきれずに、適切なコンテンツ管理やコンプライアンスが徹底されないような状況を生み出していると警告している。

 「Office SharePoint Server 2007は、企業内のコラボレーションやコンテンツ管理のためのすぐれた製品だが、その成功が裏目に出るかもしれない」──CMS Watchのアナリストで、さまざまなECM(エンタープライズ・コンテンツ管理)技術/製品を分析した同社の最新リポートの主執筆者であるアラン・ペルツシャープ(Alan Pelz-Sharpe)氏の言である。

 Pelz-Sharpe氏によると、大企業では、ビジネス・ユーザーがこの製品を「IT部門に知られずに」みずからの手で導入しており、その結果、ビジネス上重要な情報がサーバ上で適切にアーカイビングされていないようなケースが生じているという。その原因が、同製品のあまりに急速な導入拡大や導入の容易さ、価格の安さにあるというのが同氏の見解だ。

 「公正を期して言えば、SharePointは実に使いやすく、すぐれた製品だ。だが、導入や操作が簡単であるため、IT部門に導入作業を頼む必要がなく、ビジネス・ユーザーみずからが導入を進めているケースが多い。また、SharePointの一部のパッケージではシート価格が非常に低額なためか、IT部門が新しいインスタンスの監視をきちんと行っていないようだ」(Pelz-Sharpe氏)

 CMS Watchの調査によると、同社の顧客である北米のある銀行では、「管理や監査がなされていないSharePointのインスタンスが5,000以上も見つかった」(Pelz-Sharpe氏)という。また、同じく顧客の大手エネルギー会社は、「以前は把握していなかった1万5,000以上のSharePointインスタンスを発見した」(同氏)とのことだ。

 Pelz-Sharpe氏は、こうしてSharePointがきちんとIT部門によって管理されないまま使われていると、その企業は法的開示の規制要件に対応するのが困難になると警告している。同氏は、ポリシーやガバナンスの欠如はIT部門に責任があると述べ、バックオフィスから管理できるアーカイビング・ポリシーを含むECM戦略を実施することを勧めている。「例えば、従業員が『保存』をクリックしたら、そのファイルはスタンドアロン・サーバではなく、集中管理された場所に格納されるべきだ」(Pelz-Sharpe氏)

 ただし、CMS Watchは、この問題については、適切な管理機能サービスを提供していないMicrosoftにも責任があると考えている。Pelz-Sharpe氏は次のように説明している。「Microsoftは今後、SharePointの分散管理機能を強化し、導入規模が拡大したら、少なくとも新しいインスタンスからのリンクやフィードバックが必ず確保されるようにして、その追跡を可能にするべきだ」

 Microsoftの担当者は先週、この件に関する取材に応じなかった。だが同社は、「CMS Watchのリポートには誤った説明が含まれており、不正確な点がある」とする以下のような声明を発表し、CMS Watchの見解に反論している。

 「SharePointはしっかりしたチェックイン/チェックアウト機能を備えており、充実したセキュリティ機能により、非常に管理しやすい方法でデータを保護、発見できるようになっている。実際、(ユーザー企業のシステム管理者は)SharePoint ServerのWindows SharePoint Servicesインスタンスをすべて管理することが可能だ」

 CMS Watchのリポートによると、SharePointは市場で大成功を収めており、Microsoftに今年8億米国ドルの売上げをもたらし、1万7,000社に対して合計8,500万ライセンスが販売されているという。同社は、SharePointの急激な導入拡大は、前バージョン(2003)においても見られた現象だとしているが、Pelz-Sharpe氏は、SharePoint 2007もすでに広く普及しており、「今回のほうが問題が深刻だ」として、リポートに以下のような見解を記している。

 「一部の企業は、自社内でのSharePoint 2003の急激な導入拡大に伴う混乱を収拾するために、多大な費用を費やした。SharePoint 2007では、状況がさらに深刻なものになるおそれがある。だが、これをMicrosoftは、実のところユーザー企業の分析や計画が不足していることに起因していると主張している。われわれは、(Microsoftの強力な)販促活動がこうした導入状況を招いた面があることを無視するのは、少し不誠実だと考えている」

 ただし、CMS Watchのリポートはこの問題の広がりについて、具体的な数字をもって説明しているわけではない。Pelz-Sharpe氏はそのことを認めながらも、「事例は山ほどある。これはごく少数の企業で起こっている問題では決してない」と述べている。

(Jon Brodkin/Network World米国版)

米国CMS Watch
http://www.cmswatch.com/
Microsoft Office SharePoint Server 2007のWebページ
http://office.microsoft.com/ja-jp/sharepointserver/

提供:Computerworld.jp