Red Hat、Linuxにリアルタイム機能を追加する新ソフトを発表――金融業界を主なターゲットに2008年初めに出荷予定

 米国Red Hatは12月4日、メッセージング/リアルタイム/グリッド機能を統合したソフトウェア「Red Hat Enterprise MRG(Messaging、Realtime、Grid)」を発表した。同ソフトはLinux OSにリアルタイム処理機能を追加するもので、メッセージングやトランザクションの高速処理ニーズが高い金融サービス業界を中心に提供していく構えだ。

 MRGは、2008年初めにサブスクリプション・ベースで正式出荷される予定。近くパブリック・ベータ版が公開される予定で、オンライン登録をすれば ベータ版 を入手できる。

 MRGは、IBMの「MQSeries」やTibco Softwareの「Tibco」といったメッセージング・ミドルウェアと同様の役割を果たす。加えて、リアルタイム機能やタスク割り当て機能、処理能力割り当て機能により、ミドルウェアの機能拡張を実現するという。

 Red Hatの製品マネジャー、ブライアン・チェ(Bryan Che)氏によると、MRGは、リアルタイム処理機能をOSに付加するだけでなく、タスクのスケジュール管理、異機種混在環境におけるリソースの最適な割り当ても可能にするという。

 例えば、企業内にあるWindowsのデスクトップPCが待機状態になっている場合、そのPCをMRGが全PCのリソース・プールに自動的に組み入れ、他のタスクに割り当てる。ただし、この機能は、インテルのデスクトップ管理技術である「vPro」をMRGに統合する必要がある。

 MRGは、企業内におけるオープンソース基盤の確立を目指す2つのキー・プロジェクトで開発された技術を使用している。プロジェクトのうちの1つは、異なるシステム間におけるメッセージの表示方法/処理方法などに関する標準プロトコル「Advanced Message Queuing Protocol(AMQP)」を開発している。Cisco Systems、Credit Suisse、JP Morgan Chaseなどが同プロジェクトを支援している。

 もう1つのプロジェクトは、ウィスコンシン大学で開発された高スループット・コンピューティングの実現を目指すオープンソース・プロジェクト「Condor」である。Red Hatは、ウィスコンシン大学とチームを組み、Open Source Initiativeの承認済みライセンスとしてCondorのソースコードを提供している。また、Condorが進める技術開発プロジェクトに出資する意向も示している。

 The 451 Groupの主任アナリスト、ウィリアム・フェローズ(William Fellows)氏は、MRGが既存のメッセージング基盤に取って代わる可能性は低いとしながらも、「OSによるトランザクションの高速処理が求められるようなIT環境にとっては非常に有効だ」と、MRGを高く評価している。

 同氏によるとMRGの機能は、メッセージ要素のわずかな遅延によってアービトラージ(裁定取引:金融商品のあるべき価格と市場価格の差を利用して利ざやを稼ぐ手法)のチャンスが生まれるような金融サービス業界にとって重要だが、他の企業でも役立つ可能性があるという。

 またFellows氏は、「IBMが近々投入予定のMQSeriesアップデート版よりも先に、Red HatはMRGをリリースしたいのだろう」との見解を示している。

(Elizabeth Montalbano/IDG News Service ニューヨーク支局)

米国Red Hat http://www.redhat.com/

提供:Computerworld.jp