IBM、BI大手のCognosを50億ドルで買収――Oracle、SAPに続いてIBMも。止まらぬBI市場の大型再編

 米国IBMは11月12日、カナダのビジネス・インテリジェンス(BI)ソフトウェア・ベンダーのCognosを現金総額約50億ドル、1株当たり58ドルで買収することで同意したと発表した。今回の買収により、IBMはBI分野のサービスを拡充し、従来のユーザー基盤をさらに広げていく構えだ。

 BIならびに業績管理ソフトウェア市場では、ここのところ合併の動きが加速している。今年4月、OracleがHyperionを買収、続いて6月にCartesisとALG SoftwareがBusiness Objectsに吸収され、さらに先月SAPがBusiness Objectsの買収を発表した。Cognos自身も、先に業績管理ソフトウェア・ベンダーのAplixを買収している。

 今回の買収で特に打撃を受けるのは、IBMのライバルであるHPだろう。HPはCognos製品を利用して設計したBIやデータ保管プラットフォームを提供しているからだ。それについてIBMは明言を避け、「顧客は個別のBIや業績管理アプリケーションではなく、包括的なソリューションを求めている」と声明で述べるにとどまった。

 SAPやOracleもCognos製品との連携を行っているが、IBMは、「他のベンダーとの提携関係を保ち続けるよう細心の注意を払う」と強調している。

 IBMは2006年2月から「インフォメーション・オン・デマンド」という戦略の下、多数の買収を実行してきており、Cognosは23番目の買収となる。Cognosとは以前から業務提携を行っているため、顧客層が重なる部分もあるが、Cognosは約2万5,000の顧客を擁していることから、米国ニュークレアス・リサーチのシニア・アナリスト、デビッド・オコーネル氏は、「IBMは新規顧客を買ったようなもの」と指摘している。

 IBMによると、買収は2008年第1四半期に成立する見通しだという。CognosはIBMのインフォメーション管理ソフトウェア部門に統合される予定で、CognosのCEO、ロブ・アッシュ氏は、同部門の本部長であるアンブジ・ゴヤル氏の下でCognosチームを率いることになる。なお、Cognosは現在、約4,000人の従業員を抱えているが、そのうち何人を雇用するかについてIBMは明らかにしていない。

 オコーネル氏は、以前IBMがRational Softwareを買収してWebSphere部門に統合した際、一部のWebSphereユーザーの間で混乱が生じたことを指摘し、「今回のCognosの統合も円滑に進められるかどうかは懐疑的」との見方を示している。

 加えて同氏は、今回の買収によって、MicroStrategyなどの独立系BIベンダーに買収のプレッシャーがかかると予想している。エンドユーザーにとって意味があるかないかは別として、自社の株価を上げるには、買収を受け入れるしか道がないからだ。

 Forrester Researchの主任アナリストであるボリス・エベルソン氏は、MicroStrategyを買収する可能性の高いベンダーとして、Cognos買収の機会を失ったHPを候補に挙げている。同氏はブログで、「HPは、MicroStrategyやInformation Builders、Actuateといった小規模ベンダーの買収で手を打つしか選択肢がなくなった。BI大手では株式未公開企業のSAS Instituteも残っているが、規模の大きさや企業文化の違いから統合は困難であり、買収の可能性は低いだろう」とコメントしている。

(ピーター・セイヤー/IDG News Service パリ支局)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp