GNOME 10周年、de Icaza氏とWaugh氏インタビュー

 GNOMEプロジェクトが始まったのはつい昨日のことのように感じるが、実はMiguel de Icaza氏がプロジェクトを開始してからもう10年になる。de Icaza氏は最近は主にMonoに取り組んでいるものの、GNOMEコミュニティは進歩を続けている。今回GNOMEの歴史を振り返り今後を見通すため、de Icaza氏と長年のGNOME貢献者でありGNOME Foundationの理事を務めるJeff Waugh氏に話を聞いた。

 GNOMEプロジェクトが始まったのは1997年8月15日のことで、この日de Icaza氏がGNOME(GNU Network Object Model Environment)プロジェクトをアナウンスした。de Icaza氏はアナウンスにおいて、GNOMEは「フリーでユーザフレンドリなアプリケーション/デスクトップ用ツール一式であり、CDEやKDEに似ているが完全にフリーソフトウェアだけで実現する」としていた。

 de Icaza氏は、GNOMEは現在、同氏が当初思っていた以上に成長したと考えている。「当時自分たち自身で設定した目標、すなわち、フリーソフトウェアを実用的な選択肢とするためのデスクトップとアプリケーション一式の作成ということに関して言えば、間違いなく達成したと思う」。

 「とは言え、予想外のこともあった。うまく行ったこともあったし、大変だったこともあった(幸いなことに良くないことは起こらなかった)……。うまく行ったことの中には、プロジェクトが数多くの新たな方向に向かって枝分かれしたということがある。これは当初は予定していなかったことだが、まさにソフトウェアがオープンソースであることの素晴らしい副産物だった」。

 「大変だったことというのは、PCが遍在するようになったことで、数多くの新たな開発や改良が行なわれることをエンドユーザが期待するようになったことだ。ユーザビリティの向上、機能性の向上、アクセシビリティのサポート、洗練されたアプリケーション、一貫性のあるアプリケーション、見掛けの良いアプリケーション、相互運用性の向上、様々なタイプのユーザ(ホームユーザ、SOHOユーザ、政府機関ユーザ、教育機関ユーザ、エンタープライズユーザ)向けの特殊な要求などがある」。

 「しかしGNOMEコミュニティは、新たに生まれたニーズに合わせて開発や改良を行うことができたし、また、その他のサードパーティ製のソフトウェアを統合し、すべてのソフトウェアをパッケージにまとめて完全なシステム一式を作り上げたりすることもうまく行なってきたと個人的には思う」。

 しかしde Icaza氏は、Gtk+がより多くのサードパーティの開発者を引き付けることができていないことが残念だと述べた。「残念ながらGtk+もQtも、すぐに使うことのできるプラグ&プレイのコンポーネントを提供するサードパーティのコンポーネントベンダの大規模なエコシステムを構築するまでには至っていない。これはMicrosoftや、Microsoftにはやや劣るもののJavaの実に優れている点であり、おそらくGNOMEがもっと頑張ることのできる点だろう」。

 とは言えde Icaza氏は、ツールキットについては「うまく成熟してきた」と評価し、CairoがGtk+に追加されたことに触れて「見掛けの良い、まったく新しいアプリケーション群を作成するためのツールを数多く使用できるようになり、魅力的なアプリケーションを作成するための敷居が低くなった」とした。

 またde Icaza氏によると、「ストリーミングやアニメーションの組み込みサポートなど、現在一般的になりつつあるものを扱う」ことができるようにGtk+を改良するための取り組みが進行中とのことだ。

GNOMEが達成したこと

 サードパーティの開発者が少ないにも関わらずGNOMEはこの10年間で、便利なアプリケーションが数多く揃った完成度の高いデスクトップ環境になった。しかしWaugh氏によると、GNOMEはすでにそれだけではなくなっているという。

 まず始めにWaugh氏は、GNOMEは「ソフトウェアの自由はオタクのためだけのものではない」という考え方を取り入れたのだと指摘した。Waugh氏によるとGNOMEは「FLOSSにおけるユーザビリティへの取り組みに関する方針を一転させ」、オタクではないユーザの意見に耳を傾けたのだとのことだ。「われわれは以前のGNOMEがオタクではないユーザにとっては複雑で不親切なソフトウェアであることを自覚していたので、オタクではないユーザの意見を聞きながら、今のGNOMEをすべての人々にとって優れたものにした」。

 「GNOME 2.0以降はユーザ体験を最重要課題にかかげて、ユーザビリティ/アクセシビリティ/国際化を重要視してきた。Ubuntuの成長やDellハードウェアでのプレインストール、LenovoのノートPCへのNovellのプレインストール、Red HatのOLPCやGlobal Desktopプロジェクトへの取り組みといった今われわれが手にしている成功は、それらの基礎となっているユーザ体験プラットフォーム――すなわちGNOME――がユーザビリティに真剣に取り組んだことの直接的な結果だと思う」。

 GNOMEには、使いやすいということだけでなく、新バージョンのリリース時期が他のプロジェクトと違って予測可能だという特徴もある。Waugh氏によるとGNOMEは「半年ごとのリリースを何年間にも渡って続けることにより、FLOSSのリリース管理を、プロプライエタリなソフトウェアのリリース管理以上に予測可能で信頼性の高いものにすることができる」ことを証明したとのことだ。

 このことは、GNOMEやFOSSの開発を追い掛けていない人にとっては大したことではないように思われるかもしれないが、Waugh氏によるとGNOMEやGNOMEに関係する他のプロジェクトにとっては大きな影響があるのだという。

 「まず第一には、大規模な機能投入を行なうことなく、有意義な機能を少しずつ定期的に提供することができるということを意味する。そのためテストとリリースに非常に長い時間が必要となったり、機能を知ってもらうためのトレーニングなどの負担をユーザにかけることになったりすることもないということだ。また開発者にとっては、新しい開発を始めるべきタイミングやバグ修正/テストに専念すべきタイミングを知ることができる、言い換えると開発者が楽しいことをする期間とユーザにとって良いものにする期間との区別を明確にすることができるということだ。さらにGNOMEを製品に含めて配布するパートナーにとっては、GNOMEがちゃんとリリースされることが分かっているため前もって計画を立てることができるということだ。UbuntuやFedoraといったプロジェクトに至ってはGNOMEのリリーススケジュールに基づいて自分たちのリリーススケジュールを決めているほどだ。最後に、GNOME以外の数多くのFLOSSプロジェクトにとっては、同様のリリース戦略やリリースプロセスを採用するヒントになった――このことはFLOSSのエコシステム全体に大きな影響を与えた」。

 Waugh氏はまた、GNOMEへの貢献者の幅広さを称賛した。「GNOMEはデスクトップを作る人々の単なる集まりではない。GNOME開発には、ソフトウェアスタックのあらゆる層からそれぞれの専門家が、ユーザ体験を全体的に向上させるために参加している。その中には、性能改善やパワーマネージメントに取り組むカーネル開発者もいれば、最先端のハードウェアに魔法のようなことをさせようとXやGNOMEのツールキットに取り組むインフラストラクチャ/プラットフォーム開発者もいれば、アクセシビリティ/インターフェースに取り組んでユーザを増やす開発者もいれば、ユーザのための素晴らしいツールを作成するアプリケーション開発者もいる」。