ICANN、国際化ドメイン名の実用化に向け実環境テストを実施へ――トラブル発生時の問題抽出プロセスなどを検証

 インターネットのドメイン名を監督している非営利組織ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は6月29日、実際のインターネット環境を使った国際化ドメイン名(IDN)の運用テストを今年11月までに実施することを明らかにした。トラブル発生時の問題抽出プロセスなどを検証することが目的だとしている。

 ICANNは先週、プエルトリコで定例会議を開催した。ICANNの幹部は、インターネット統治体制の変更に関する話し合いに進展があったと述べている。

 ICANNが取り組んできた課題の1つに、ドメイン名における非ラテン文字の扱いがある。ICANNはかねてから、キリル文字やアラビア文字などをドメイン名に使用できるようにしたいと考えていたが、これまでなかなか実現できずにいた。

 ICANNの議長であるビント・サーフ氏によると、同組織は2003年に使用可能文字の対象を広げようと試みたが、その際、運用規則が緩すぎることがわかったという。同氏は今回の会議に関する電話取材の中で、「紛らわしい表記のドメインが登録され、ユーザーの間に混乱が広がるおそれがあった」と話している。

 例えば、「restaurant」を表すキリル文字は、ラテン語系アルファベットの「pectopaht」に見える。この状態のままでドメインを登録すると、他のユーザーを混乱させてしまう可能性があるとサーフ氏は語った。

 ICANNでは、こうした混乱を防ぐための運用規則を策定することを計画している。その一環として、実際のインターネット環境でのIDNの運用テストを今年11月までに開始するという。

 このテストの目的は、トラブルが発生したときに、速やかに問題の部分を抜き出せるかどうかをチェックすることだ。すでにICANNは、こうしたプロセスのテストを研究所で行ったとしている。「われわれは、新たな仕組みに問題がないことに自信を持っている。だが、実環境で機能させた際に何が起こるかはだれにもわからない」(サーフ氏)

 ICANNの会議では、IPv6普及活動の継続も議題に上がった。現在のIPv4対応システムでは、2011年から2012年ごろにかけて、配布できるアドレス空間が枯渇するとICANNは見ており、この問題は特に重要な意味を持っている。アドレスを引き続き配布できるようにするには、IPv6が広く採用されることが不可欠なのだ。

 ドメイン名とインターネット・アドレスの一致状況の認証を目的としたデジタル署名関連の取り組みについても、サーフ氏は大きな進歩が見られたと語った。デジタル署名は、ドメイン名に付随するインターネット・アドレスに、故意であれ偶然であれ、不適切なものが使用されていないことを確認する技術である。「DNS(Domain Name System)の中核的なアーキテクチャにとって、(デジタル署名への取り組みは)重大な変更と言える」とサーフ氏は述べている。

 ICANNは、包括的なトップレベル・ドメインを新たに設けるときに適用する、より一般的なプロセスも確立した。2000年、2003年とそうしたポリシーに手を加え、今後はその経験を踏まえて、ドメイン名を増やす際の一般規則を定めるつもりだと、サーフ氏は説明した。ICANNは2008年半ばまでに、新たなドメインの提供を予定しているという。

(ナンシー・ゴーリング/IDG News Service シアトル支局)

ICANN
http://www.icann.org/

提供:Computerworld.jp