レビュー:Mandriva 2007 Spring――他を圧倒する完成度

 Mandrivaは最近、同ディストリビューションにとって今年初めてのリリースとなる「Mandriva Linux 2007 Spring」を発表した。Mandriva Linux 2007 Springにはこれまでのリリースと同様に5つの版があり、そのうちの2つの版については無料でダウンロードすることができる。今回私は、サポートと数ギガバイトのパッケージが含まれている、76ドルのPowerpack版をインストールして試してみた。その結果Mandriva Linux 2007 Spring Powerpack版は、他の数枚のCD/DVDを使った無料ディストリビューションに勝るだけでなく、他のライバル有料ディストリビューションを大きく引き離していることが分かった。

 今回私はSpring Powerpackを2GB RAMのデュアルコアマシン、384MB RAMの1.7GHz Celeronマシン、1.25GB RAMの1.4GHz CeleronノートPCの3台のマシン上で試してみた。デュアルコアマシンにインストールした際にはMarvell PATAディスクコントローラ用のモジュールをロードすることができないというメッセージが2度出たが、そのような「エラー」にも関わらず、USB DVDドライブを使って無事にインストールを終了することができた。

 インストールの際には、パーティション分割の画面から、SATAドライブやIDEドライブ上に元からあったext3パーティションをリサイズして空けた領域にSpring Powerpackをインストールすることができた。ノートPCでは、PC Cardワイヤレスネットワークアダプタが問題なく検知/設定された。一方デスクトップマシンのLinksysワイヤレスアダプタについては検知された後、Linux用のドライバがないのでNdiswrapper経由でWindowsのドライバを利用してカードが使えるようになった。

 またSpring Powerpackは、19インチワイド画面の1440×900液晶モニタについても、またATI Radeonグラフィックカードについても問題なく検知/設定した。その他にもUSBドライブ、USBカメラ、USBマウス、USBキーボード、安価なPS2-USB変換器を試してみたがすべて問題なく動いた。

多数の選択肢

 インストールの完了後、私は早速ソフトウェアを試してみた。Mandriva Spring PowerpackのDVDには3,000以上のパッケージがバンドルされており、ともに最新版であるGNOME 2.18とKDE 3.5.6、Mandriva仕様のOpenOffice.org 2.1、最新版のKOffice 1.6.2などが含まれている。カーネルについては、カスタマイズされたLinux 2.6.17が使用されていた。

GNOME with Metisse
GNOME上のMetisse(クリックで拡大)

 Spring PowerpackにはGNOMEやKDEなどのデスクトップ環境に加え、3D拡張に対応するウィンドウマネジャとしてBerylとCompiz、そしてMetisseが含まれている。私の各マシンで試したところ、どの3D拡張もまったく問題なく動いた。なお3Dデスクトップはログイン画面で選択することも可能だ。

 Spring Powerpackには、Virtual Box、VMware Player、KQemuカーネルモジュールをともなったQemu、Xenなどの仮想化ツールもいくつか含まれている。これらのツールはどれももともと無料で入手可能なツールであり、どのLinuxディストリビューションにも含めることができるものだが、最初からインストールされていたり、クリック一つでインストールできる状態になっていることは間違いなく大きな利点だ。

 その他にも、他のディストリビューションには含まれていないがSpring Powerpackには含まれている無料のアプリケーションとして、Google PicasaとGoogle Earthがあった。ただしGoogle PicasaとGoogle Earthは、バンドルされているのではなく、それらをGoogleのウェブサイトからダウンロードしてインストールするためのシンプルなスクリプトが含まれていた。一方VoIPについては、SkypeとWengoPhoneがバンドルされていた。

 マルチメディアコンテンツの再生に関しては、KMplayerやXineがそれぞれのプラグインパッケージとともに含まれているのに加え、Gstreamer-pluginsも含まれていた。私はMP3ファイルの再生にはAmaroKを、DVDやVCDを見たりAVIファイルやMPEG4ファイルを再生したりするにはKMplayerを、そして .RMや .RAMのストリーミングの再生にはRealPlayerを使用した。またFirefoxには、そのようなファイルをインターネット経由で再生するためのプラグインに加え、FlashやJavaのためのプラグインも搭載されていた。その他にも、音楽製作/編集用のフリーなサウンド・シンセサイザ・アプリケーションであるLMMSや、ビデオファンのためのマルチトラック・ノンリニア・ビデオエディタのKdenliveなどがバンドルされている。

 一方、Spring Powerpackに入っていて欲しかったが含まれていなかったアプリケーションとしては、Abiwordワードプロセッサがあった。またCeleronデスクトップ上では軽量デスクトップ環境のXfceを走らせるのを私は気に入っているのだが、Spring PowerpackにはXfceではなくFluxboxが含まれていた。なお試してみたところFluxboxは軽量すぎる(機能が少なすぎる)ように私には感じられた。さらに、以前のリリースとは異なりSpring Powerpackには、Windows用のゲームをするためのCedegaと、フリーソフトではないが人気のあるDVDプレイヤであるLinDVDが入っていなかった。

 なお、デフォルトでインストールされていないパッケージを追加するのは簡単にできるようになっている。実のところSpring Powerpackの最大の利点は独自の設定用ツールであり、インストールから管理まで、ディストリビューションの様々な局面でユーザを支援してくれる。例えばMetisse 3Dデスクトップを利用したくなったがパッケージをインストールしていなかったという場合には、指示される通りにMandriva DVDを用意しさえすれば、後は自動的にパッケージがインストール/設定されて、Metisseが起動するようにしてくれる。

rpmdrake under KDE
KDE上のrpmdrake(クリックで拡大)

 ソフトウェア管理ツールであるrpmdrakeは、私がこれまでに見た中でも最高レベルの管理ツールだ。rpmdrakeはインストールされているパッケージを一覧表示し、アップデートについてはセキュリティ/バグ修正/通常の各アップデートに分類表示する。また各パッケージについての説明文に加え、更新履歴や、そのパッケージによってインストールされるファイルの一覧も表示する。

 Spring Powerpackでは、一貫性を保つためにGNOMEデスクトップでもKDEデスクトップでも同じテーマ(Ia Ora)と壁紙(spring)が使用されている。またGNOMEではパネルが画面の下部ではなく上部に位置しているものの、メニュー構成はほぼKDEと同様であり、ユーザがデスクトップの種類をあまり気にかけずに使うことができるようになっていた。

 またSpring Powerpackでは、ディスク上の全パーティションが自動マウントされ、各パーティションはその容量とともに表示される。またリムーバブル・メディアを挿入すると、その内容に応じた動作オプションがポップアップする。つまり例えばDVDを挿入した場合には、「コンテンツの一覧表示」「DVDの再生」「K3b経由でコピー」といったオプションがポップアップ表示されるし、USBカメラを接続した場合には画像を閲覧するためのオプションが表示される。

 私はSpring Powerpackを一週間以上に渡り試してみたが、私がインストールしたどのシステム上でも、クラッシュしたり反応しなくなったりしたアプリケーションは一つもなかった。ただ唯一の難点として、文書についてだけは、もっと気を配る必要があるように感じた。Spring Powerpackには基本的なKDEのヘルプとMandrivaスタートアップガイドが含まれていて、MandrivaスタートアップガイドではKDEの紹介やOpenOffice.orgの使い方からNFSへのアクセスやファイアウォールの設定に至るまで、広範な内容が扱われている。しかし仮想化やKerry Beagleなど、バンドルされているいくつかのアプリケーションについての情報が欠けていた。

まとめ

 私はMandriva Spring Powerpackにすっかり満足した。Spring Powerpackのパッケージ選択はまさに模範的で、人気のある3Dデスクトップがすべて含まれており、仮想化ソフトウェアも複数含まれていた。また私のデスクトップマシンでもノートPCでも、ハードウェアはすべて検知され、USBデバイスもすべて問題なく動いた。Spring Powerpackの独自の設定/管理ツールを使えば、初心者ユーザはコマンドラインを使う必要がないだろう。総じてSpring Powerpack版は、ただただちゃんと動く、素晴らしいLinuxディストリビューションだ。

NewsForge.com 原文