オープンソース環境への移行をいかに進めるべきか–「OpenSolutions Summit」で専門家がアドバイス

 Linuxなどオープンソース・ソフトウェアを導入するための良策を今なお探し続けている企業は少なくない。先ごろ米国のニューヨークで開催された「LinuxWorld OpenSolutions Summit」(2月14日〜15日)では、オープンソースの専門家らによって、オープンソース製品の選び方や選択方法、オープンソース・ソフトウェアを導入した実体験を交えたさまざまなレクチャーが行われた。

オープンソースは万能薬ではない

 かつて企業のデータセンター(あるいは情報システム)において脇役の存在にすぎなかったオープンソースだが、ここにきて、企業ITの中核的な役割を担うようになってきており、オープンソースへの関心は高まり続けている。実際にオープンソース環境に移行する例も少なくなくなった。

 しかし、1つのソリューションがすべてに適しているわけではない。ましてオープンソース・ソリューションは、非互換性やコスト削減など企業が抱えるすべてのITの問題に効く万能薬にもなりえない。オープンソース・アプリケーションは、あくまでも全体的なITポートフォリオの1つとしてとらえるべきだ。

 これは、 LinuxWorldで2月15日に講演を行ったオープンソース・データベース・ベンダー、エンタープライズDBのCEO兼社長、アンディ・アストー氏の意見である。同氏はオープンソース・アプリケーションについて、「金づちの1つにすぎない。これだけでは家は建たない」と強調した。

 アストー氏は、企業のIT部門にとって、オープンソースとLinuxへの移行は賢明な選択だとしながらも、これまでプロプライエタリ・ソフトウェアの選択に要したのと同じレベルの努力とリサーチが必要だと指摘する。「(移行)プロジェクトの運び方を慎重に検討してほしい。オープンソースであってもそれは変わらない——ぞんざいな仕事は禁物だ」(同氏)

 アストー氏は、オープンソース・アプリケーションの導入を決定するうえで重要となるポイントをいくつか挙げた。

■オープンソースだからといって過大に評価したり、パニックに陥ったりしないようにする。オープンソース・アプリケーションといえどもあくまで1つのツールとしてとらえるよう心がけるべきだ。

■ オープンソースとプロプライエタリ・アプリケーションのどちらも、評価・テスト・導入・サポートにかかるコストに大きな違いはない。実質的なコスト軽減を見込めるのはライセンスの部分であり、ここではTCO(所有総コスト)の5〜25%を軽減できるだろう。「(移行)プロジェクトは往々にして大規模かつ複雑であり、簡単に進められるものではない。オープンソース・プロジェクトもそれらと何ら変わるものではない」

■ 企業のIT環境では、オープンソース・アプリケーションの「ソフトウェア機能」と「容易なカスタマイズ」が最も有用なメリットとなる。企業ユーザーは以前のようにコードに気を取られずに、優れた機能を発揮する高品質なソフトウェアの入手が可能になる。これらのソフトウェアは、更新や改善など必要な修正を担うオープンソース開発者グループの大きなコミュニティによってサポートされるからだ。

■オープンソース・アプリケーションのサポートを他社に依頼している場合は、そのサポート・ベンダーのスタッフが、導入しているオープンソース・ソフトウェアのメンテナンスと開発にかかわるコミュニティで活動的なメンバーであることを確認しよう。「契約ベンダーが(コミュニティに積極的に顔を出す)メンバーであれば、彼らは専門家に間違いないと見ていいだろう」

ノベルの社内移行事例 ——エンドユーザーのスムーズな移行がカギに

 米国ユタ州プロボに本拠を置くネットワーキング・ソフトウェア・ベンダーのノベルは、2004年から社内のすべてのITインフラをLinuxに移行する作業を開始した。そこに至るまでには、アプリケーションを実際に使う社員とそれに携わる開発者との間でさまざまな提案がなされ、議論がなされた、と同社のCIO、デブラ・アンダーソン氏は当時を振り返る。

 ノベルは2003年にSUSE Linuxを買収。その後の自然な流れとして、社内のデスクトップ環境とデータセンターをLinux環境に移行する作業に着手した。

 作業は、まず社内ユーザーにオープンソースのオフィス・プロダクティビティ・スイート「OpenOffice.org Version 1.0 」を提供するという緩やかなペースで進められた。

 そして、2005年までに、約87%のユーザーを「Novell Linux Desktop Version 9」に移行させることに成功したのである。

 アンダーソン氏によれば、この移行プロセスを順調に進めるために、約54%のユーザーのマシンをデュアル・ブートに設定し、「Microsoft Windows」を使い続けることを許可したという。変更事項はステップ・バイ・ステップ方式で説明が行われ、実施に移された。ユーザーとITスタッフは新しい環境に徐々に慣れて安心感を増していったという。

 こうした慎重な進め方によって、ノベルは障害発生時にもその事態を正確に見極め、迅速に対処することができたという。例えば、あるとき、ラップトップ・ユーザーがNovell Linux Desktop Version 9にワイヤレス機能が内蔵されていないことを発見した。これはかなり深刻な問題である。この報告を受けた同社は「直ちにその機能を開発して(OSに)組み込み」(同氏)、社内ユーザーと顧客に同様の対策を講じることができた。

 そして、ノベルは2006年までにエンタープライズ指向の強い「SUSE Linux Enterprise Desktop Version 10」の導入を開始するとともに、ユーザーをさらに機能が充実したOpenOffice.orgのVersion 2に移行させた。

開発者に新たなスキルを

 アンダーソン氏によると、移行作業が続くなか、ノベルは社内のソフトウェア開発者にオープンソース・アプリケーションにかかわる新しいスキルと言語を学ぶように奨励したという。

 「プロプライエタリ製品に劣る機能しか備えていない(オープンソース)製品を前向きに受け入れ、あらためてオープンソース・プロジェクトに戻って改善を施すプロセスが、彼らには必要だった」(同氏)

 Linuxはノベルのデータセンターにも導入され、現在、約47%のサーバで稼働している。

 アンダーソン氏によると、ノベルはそれまでプロプライエタリ・アプリケーションに費やしていた膨大なサポート・コストの削減に成功しただけでなく、社内調査を実施した結果、社員の満足度が向上したこともわかったという。

 数年前にLinuxとオープンソース・アプリケーションに移行する話が出たとき、社内からは「不可能だ」と反対する意見も聞かれたが、「結果的には可能だったし、しかもそれほど難しくなかった」とアンダーソン氏は満足げに語った。

(トッド・ワイス/Computerworld オンライン米国版)

「LinuxWorld OpenSolutions Summit」 http://www.linuxworldsummit.com/

提供:Computerworld.jp