Linux用各種フォト管理アプリケーションの比較

デジタル写真を修正する場合、専用の画像エディタを使えばまずは間違いないはずだが、たいていのユーザが必要としているのは簡単な補正機能だけでしかない。また実際の作業において一番時間を食うのは、写真ファイルの管理や分類、あるいは必要とする画像の検索などの雑務なのである。そうした作業をLinux上で行う場合、その他の例に漏れず、利用可能なアプリケーションとしては様々な選択肢が存在している。ここではメジャーなフォト管理アプリケーションをいくつか取り上げ、それらの長所と短所を見比べることにしよう。

Linuxにおけるデスクトップ環境の双璧、KDEおよびGNOMEプロジェクトでは、それぞれDigiKamおよびF-Spotという独自のフォト管理アプリケーションが用意されている。これらのソフトはAppleオリジナルのコンシュマ用フォト管理アプリケーションのユーザインタフェースを参考にしており、いわば“iPhotoクローン”と呼ぶべき存在と見なせるだろう。どちらも機能的には、サムネイル形式による写真の一覧表示を始め、USBデジタルカメラからのファイルインポート、アルバム形式による写真のグループ化、分類用のキーワード/タグの設定、メジャーな写真共有Webサイトへのエクスポートなどに対応している。

ここではDigiKamおよびF-Spotの機能を紹介してから、その他の若干マイナーなフォト管理アプリケーションについても見てみることにしよう。その際には、プロプライエタリ系アプリケーションではあるが、Googleから提供されているPicasaについても取り上げることにする。

DigiKam

Digikam
DigiKam(クリックで拡大)

DigiKamに装備された機能の多くは、KDE Image Plugin Interface(KIPI)を利用している。KIPIとはプラグインフォーマットの一種で、KDEの画像系アプリケーションにおいて様々な用途に用いられているものだ。DigiKamの特長は豊富な編集機能を有していることであり、ブラー、シャープ、反転、色補正、赤目処理など、一般的なフォト管理アプリケーションでは行えない様々な処理を施すことができる。またSQLiteを用いて写真情報を管理しているため、様々な条件による写真検索を行うことも可能だ。

DigiKamの欠点は、すべての写真ファイルを一まとめにして作業用ディレクトリに収録しなければならない点だ。多量の写真データを扱う場合(そうでない場合、そもそもフォト管理アプリケーションなど必要としないはずだが)、これは操作的に面倒なだけでなく、ディスクスペースも無駄に消費することになる。こうした挙動はオプション化すべき操作だろう。また写真をインポートする場合も強制的に1つのアルバムに収録されてしまい、ライブラリ中の画像は個別的に操作することはできず、データ管理的にも様々な制限が課されることになる。なおDigiKamではExifタグの読み込みをサポートしているはずなのだが(編集は不可)、私の環境ではその処理に何度も失敗しており、その点はインポート先のカメラを代えても変わらなかった。

またDigiKamのインタフェースについては、多くのユーザが不満を抱いている(私もその1人である)。具体的には、横向きタブでアプリケーションの動作モードを切り替えること、操作に応じてウィンドウペインの表示と非表示が勝手に変更されること、メニュー構造が整理されていないことなどである。特にメニューについては、画像の一覧用ブラウザと画像の個別表示ウィンドウには9種類ものメニューが並んでいるが、これら2つの画面におけるトップレベルのメニュー構成は、一部は共通し一部は異なるという非常に複雑な表示となっているのだ。その他にもコマンド名が間違っているといった、ユーザフレンドリな構成とするための配慮が欠けている部分が色々と散見される(シャープ用フィルタが「refocus」とされているなど)。

F-Spot

F-Spot
F-Spot(クリックで拡大)

GNOMEのF-Spotは、Monoをベースとして作成されたアプリケーションである。このソフトはDigiKamよりも分かりやすいインタフェース構成を取っている反面、本来行えるべき機能の多くが正常に動作しないという不備も抱えている。例えばF-SpotのWebサイトの説明を見ると、デジタルSLRで使われているRAWファイルフォーマットのサポートが謳われており、その気になって使ってみると、実際に読み込めるのはサムネイル情報およびExifタグだけであることが判明し、しかも一部のタグは正確に読み取れないという有様だ。

問題はそれだけではない。F-Spotの画像インポート用ダイアログでは、インポート後の画像をF-Spotのディレクトリにコピーするか、あるいは元のまま残しておくかを選択できるのだが、私の環境で試した限り、コピー指定を“オフ”にしておいてもコピーが実行されてしまうのである。

またF-Spotにおける写真検索機能は、他の同種ソフトと比較した場合、非常に貧弱なものでしかない。タグやタイムスタンプを検索条件に指定することはできるものの、Exifタグの内容による検索は行えないのである。また、コメント文やレーティングを付ける機能が用意されていないため、当然そうした要件での検索もできない。あと私個人の感想として、画像コレクションのスクロール、表示、インポートの速度が、DigiKamに比べてF-Spotの方が明らかに遅いという不満もある。

その他の選択肢

GQview
GQview(クリックで拡大)

ここまでの説明を読む限り、Linux用フォト管理アプリケーションに過大な期待をかけるべきではないと思われるかもしれないが、あきらめるのはまだ早い。こうした作業を行うためのアプリケーションには、その他の選択肢も存在しているからだ。例えば画像ビュワーが必要であれば、GTKをベースに作成されたGQviewというアプリケーションを是非ともお勧めしたい。GQviewは、DigiKamやF-Spotに比べて機能の総数では劣っているが、安定して使えるというメリットを有している。機能的には、キーワードによるタグ付け、コレクション管理、Exifメタデータの対応、細かな条件指定による画像検索などを行えるが、何よりも有り難いのは、独自仕様の画像ライブラリ管理方式を強制されないことだ。また動作速度も信じられないくらい高速で、今回レビューしたアプリケーション群の中でもダントツのトップスピードを発揮できると言って間違いないはずである。

このアプリケーションの欠点としては唯一、画像の編集ができないことが挙げられる。ただし、外部プログラムとして登録した画像エディタ上で画像を開かせることは可能だ。つまりGQviewのユーザ設定では、Controlキーのショートカットとして最大8個の外部プログラムを登録しておけるのである。こうした方式は、オールインワン形式の万能アプリケーションより柔軟な運用ができる点を評価するべきだろう。

imgSeek
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巨大な画像コレクションを扱うパワーユーザの場合、質実剛健的なGQviewに実装された必要最小限の機能群に不足を感じるかもしれない。その様なユーザは、メタデータ関連の操作が充実したImgSeekを試してみるべきだろう。ImgSeekでは、Exifデータはもとより、高価な“IT資産管理ツール”専用と思われがちなIPTCメタデータも扱うことができるのだ。いずれの形式のメタデータであっても、ImgSeek上での編集および検索を行うことができる。

ここまでに紹介した2つの代替アプリケーションであるが、機能と操作性を最優先するユーザにとっては、どちらもベストな選択肢とは言えないだろう。GQviewには編集機能が装備されておらず、ImgSeekは検索機能に特化しすぎている。Linux用フォト管理アプリケーションに求める要件が「iPhoto並の操作性を備えていること」というユーザであれば、Googleから提供されているPicasaの使用を検討すべきだ。

Picasa
Picasa(クリックで拡大)

オープンなフリーソフトウェア以外は使用しないと固く決意しているユーザの場合、これ以降は読み飛ばして頂いても構わない。私の経験の範囲内という条件付きだが、現状のLinux用フォト管理アプリケーションにおいて無料で使えるベストの選択肢はPicasaであると言っても過言ではないだろう。RAWファイルのインポートやExifデータの読み取りが問題なく行えるのは当然として、多様なエクスポートオプションが設定可能であり、他のフリーソフトウェアでは不可能な順番印刷なども行えるのだ。

私の試した限り、Picasaがクラッシュしたことは1度もなく、機能的にも操作的にも優れたインタフェースでまとめられている。欠点を挙げるとすれば、やはり非オープンなプロプライエタリ系アプリケーションということになるだろう。またそうした点が気にならないユーザの場合でも、Picasa for LinuxはGoogle EarthのようにネイティブなLinuxアプリケーションではなく、本来はWindows用であったものをWINEを介してLinux対応にしてあることは心得ておく必要がある。パッケージにはWINEコンポーネントが組み込まれているので、エミュレーション関係のセットアップおよび設定に関して問題はないが、実際に使い始めると頻度は低いもののWindows風のファイル選択画面などに遭遇することがあるはずだ。もっとも、その程度は我慢の範囲内だろうが。

DigiKamおよびF-Spotについては、ここで述べた欠点が将来的なリリースで改められることを望む次第である。オープンソースの素晴らしさは、そうした柔軟性にこそ求められるはずだからだ。もっとも当座はフリーソフトウェア系の選択肢を選ぶしかないかもしれないが、オールインワン形式のデジタルフォト管理アプリケーションとなると、やはりGoogleのPicasaが一番であろう(プロプライエタリ系アプリケーションではあるが)。年末年始の休暇シーズンを迎えるに当たり、事前にこれらのアプリケーションを試しておいた方がいいユーザも多数存在するのではないだろうか。

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