Debian開発者たちに報酬を支払う組織が始動

発表から1か月して、Dunc-Tankは最初の実験を着々と進めている。Dunc-Tankとは、Debianの選ばれたプロジェクトに資金を提供する非公式な組織である。彼らは、Debian内にあったこの実験への盛んな批判を鎮め、いまや寄付金を受け付ける態勢になっている。

9月19日の発表で、Dunc-Tankは手始めにDebianの各リリース・マネージャに1か月間報酬を払うことを提案していた。これはDebianの次の公式リリースを予定どおり12月にリリースできるようにするためである。この提案により、Debianコミュニティ内ですぐに論争が巻き起こった。少数ながら声高なDebian開発者たちは、報酬を支払うという考え方に反対した。また、Debianのプロジェクト・リーダーであるAnthony Towns氏と他の著名なDebian開発者が関与しているため、部外者から公式なDebianプロジェクトと見られるのではないかと懸念する人たちもいた。この論争は、DebianがDunc-Tankを支持すべきかどうかという点に関する一般決議案から、すぐにTowns氏の罷免という2つ目の決議案へと発展した。

投票結果

これらの問題は10月15日に投票結果が発表されたことで決着した。Debianの修正Condorcet投票方式――投票の各選択が定足数に達していて、他のどのオプションにも勝っていることが必要とされる――により、「Debianプロジェクト・リーダーを是認し、非公式なDunc Tankの成功を祈る」ことをDebianのメンバたちは決断した2つ目の決議案に関しては、Towns氏の罷免を否決し、「さらなる議論」を選択した。

3つ目の関係ない一般決議案については、Linuxカーネルのソースレスなファームウェアの取り扱い方に関して、さらなる議論が選択された。

これらの結果に対して、Dunc-TankのメンバであるRaphaël Hertzog氏は「私たちには少しも意外なことではない」と言う。Hertzog氏によると、debian-privateメーリング・リストでの議論は「大部分のDebian開発者がDunc-Tankを支持していることを示していた」。

Towns氏は次のように語る。「意外だったのは、罷免に賛成した人たちがずいぶん少なかったことだ。私はもっと多いと思っていた」

投票結果はDunc-Tankに無批判な支持を与えたわけではない。とりわけ、罷免決議案のさらなる議論への投票は、もう1つの投票を引き起こす可能性がある。しかしながら、投票結果が示しているのは、リリース・マネージャに報酬を支払うというDunc-Tankの最初の実験に対する暫定的な承認だとTowns氏は見ているようだ。「断固として反対しているのは一握りの人たちで、他の人たちはやってみればいいだろうと思っている。私にはそう見える」

とはいえ、Hertzog氏曰く、投票結果は「少数者の懸念を退けるべきだとは言っていない。私たちには、さらなる議論が必要だ。そうして、一部の人たちを排除しないような資金提供システムを運営するためのバランスのとれた方法を見つける必要がある」。

こうした意見はあっても、Dunc-Tankの反対者から賛同を得ることは不可能かもしれない。「考えを変える者はいない」とTowns氏は言う。その証拠として、彼はDunc-Bankを挙げた。これはDunc-Tankホームページの言い回しをパロディー化しているサイトで、その目的はDunc-Tankが頑張っても、Debianの次のリリースが遅れるほど多くの重大なバグを報告することで実験を失敗させようとするものである。Dunc-Bankが実際にリリースの品質を高める可能性もあるが、Webページの辛辣な雰囲気からすると、論争が解消される見込みはなさそうに見える。