「ヨーロッパで最悪の著作権法」がフランス議会を通過

デジタル著作権管理(DRM)に反対するEUCD.INFOが「ヨーロッパで最悪の著作権法」と称する法案が、フランスの議会を通過した。一般にはDADVSI(Loi sur le Droit d'Auteur et des Droits Voisins dans la Société de l'Information、情報化社会における著作権および関連諸権利)と呼ばれるこの法案は、Jacques Chirac大統領の署名を待って成立することになっている。しかし、反対者たちは、この法案を審議する際に政府がとった行動や法案自体の違憲性を主張することによってDADVSIの少なくとも一部についてはまだ施行を阻止できると考えている。

DADVSIの実施により、フランスの著作権法の内容は大幅に変わり、European Directive on Copyright(EUCD)に沿ったものになる。一般的にEUCDは、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に相当するものと見られている。

DADVSIの条項には、教育目的における著作権適用の例外や作品転売時の権利譲渡の明確化など、比較的無害なものも含まれている。しかし、反DRM活動家たちが懸念しているのは、ピアツーピア・ソフトウェアによる著作権作品の交換を阻止したり、DRMテクノロジを回避するあらゆる手法を犯罪とする部分である。

EUCD.INFOのFrédéric Couchet氏によると、実際、もともとの法案ではDRMの回避が偽造と同じように扱われ、3年までの懲役または300,000ユーロ(385,000米ドル)の罰金を課すことが認められていたという。いわゆるVivendi Universal改正案 ― 同社のために法案成立に向けて各組織が活動した結果によるものと言われている ― は、DRM回避に利用されるソフトウェアの開発者にも同様の処罰を求めた。

DADVSIの起案は、2003年、右派政党UMP(Union pour un Mouvement Populaire、国民運動連合)に属するフランス文化大臣Jean-Jacques Aillagon氏の下で始まった。反DRM活動家らによる猛烈な働きかけが成功し、法案に対するいくつかの改正が、米国の下院にあたる国民議会(National Assembly)で加えられた。これらの改正には、製造業者による独自仕様の楽曲フォーマットの共有、DRMテクノロジのソースコード公開を求める要求が含まれている。こうした変更についてAppleとの激しい論争が繰り広げられたことから、DADVSIは一部の英語メディアで「iTune法」とも呼ばれていた。しかし、DADVSIの改定案が2005年5月に上院議会の審議を通過した際、これらの変更は削られてしまった。

通常、上院で修正された法案は下院で再審議が行われる。しかし、DADVSIの場合、UMP政府は、早急に決着を付けるために緊急の手続きを行って法案を両院から委員会に送るという不審なやり方を取ったのだ。さらにクリスマスに向けて議会が落ち着きを失う数日間に下院での議論を行うよう日程が組まれ、議員らが私的な関心事に心を奪われる時期をねらって法案の通過を容易にしようという意図があったのではないか、とCouchet氏は述べている。こうしたねらいにも関わらず、下院は、Couchet氏が「革新的」手続きの根拠と呼ぶものを無視して政府が行った修正の緩和を提案した。同時に、EUCD.INFOは、DADVSIに反対するキャンペーンを各地で開始し、その申立書にはフランス国民170,000人と、MandrivaやSun Microsystemsを含む1,000もの組織の支持が集まった。

DADVSI法案は、上院に送られてさらに修正が行われた。中道派のUDF(Union pour la Démocratie Française、フランス民主連合)の党首François Bayrou氏をはじめ、同党に所属する上院議員が法案に反対したにもかかわらず、UDF議員らが自分たちの再選にはUMPの支援が必要だという理由で上院の投票を棄権したため、法案は上院を通過した。

Dominique de Villepin首相は、以前のやり方を繰り返して6月22日に両院議員による混成委員会に法案を委ね、会期最終日の6月30日の下院での審議を待たずに成立させた。このやり方は、政府はもう一度法案の読会を認め、条項を議論する十分な機会を下院に与えるべきだ、というUMPの副党首Yves Bur氏およびUMP議員の申し立てを無視したものだった。

また、投票のタイミングも、法案に反対しながらも出席できないUMP議員が代理人を探せないように仕組まれたものだった。通常どおりに挙手による採決が行われたが、国民の関心が深い法案では慣例になっている電子的な投票がより適切だったのではないか、とCouchet氏は述べている。DADVSIが憲法に反するという動議はあえなく退けられ、法案は議会を通過した。

DADVSI法案の通過に対してすぐさま反応が沸き起こった。EUCD.INFOのChristophe Espern氏は次のように話している。「この法案には、エンターテインメント業界および独占的ソフトウェア業界からの過度の圧力や脅しによる後押しがあった。フランス政府とその多数派は、フランス国民の自由をVivendiやMicrosoft、そしてAppleに売り渡したのだ」

この主張を裏付けるように、Vivendiのために活動するロビイストSylvie Forbin氏が6月20日にOrdre National du Mérite(国民功労章)を受章した、とCouchet氏は指摘する。特に、彼女の法案通過への取り組みが評価された結果である。

もっと重要なことは、社会党(Parti Socialist)をはじめとする政党が、下院や上院の60名の議員による申立書をフランス最高行政裁判所(Constitutional Council)に提出してDADVSIの成立を阻止し、 最終法案を改正させるための計画を進めていることだ。下院議員のPatrick Bloche氏は、DADVSIの成立を認めない理由(フランス語)を挙げている。そこには、政府が憲法に反した手法で法案を通過させたこと、法案において犯罪性に関する条文の漠然性が国民の権利を侵害していること、法案はDRMの回避に使用されうるソフトウェアの作者を不当に犯罪者扱いしており、無罪の推定に反していること、が含まれている。この申立書が提出されることで、7月末までには判決が出る見込みである。

最高行政裁判所がこの申し立てを認めなかったとしても、法案の違憲性について言明する可能性、あるいは欧州人権条約(European Convention on Human Rights)に違反するという理由でこの法案の条項の実施を認めない可能性をCouchet氏は期待している。

万一、これらがすべて失敗に終わっても、EUCD.INFOは市民による非服従運動を検討している。1つの可能性は、フランス憲法の根幹を成している人権宣言(Declaration of the Rights of Man)の第2条に記された、「圧政への抵抗」は侵すことのできない権利である、という一節を掲げて、フランスにおけるDeCSSの利用者数を明らかにすることだ、とCouchet氏は話している。

「今回は破れたが、闘いはまだ終わっていない。今回の論争で得られた圧倒的な動員力は、次の闘いでは間違いなく役に立つだろう」とCouchet氏は語っている。

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナ兼インストラクタで、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に記事を掲載しているコンピュータジャーナリストでもある。

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