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イスラム諸国への浸透が進むFOSS

イスラム諸国におけるフリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)の将来は、これらの国々における開発能力の育成などにかかっていると言えるだろう。FOSSの強みは、現地のニーズに則して非常に柔軟な対応が可能な点だ。またFOSSには、ソフトウェアの自由な配布が許可されている分だけ、競合するプロプライエタリ系製品よりも低コストで情報通信技術(ICT:information and communications technologies)を導入することができるというメリットもある。なお、Windows XPを搭載したコンピュータはユーザに悟られることなく日々Microsoftに向けて情報を流し続けていることが発覚したというレポートが最近報告されたが、そのような不安とは無縁なFOSSであれば、セキュリティ面でのアドバンテージを得ることもできる。また、他の国々やプロプライエタリ系ソフトウェアの販売元がイスラム諸国にボイコット広告の制裁などを課すこともあるが、FOSSならばそうした政治的ゴタゴタに巻き込まれることもない。

ICT分野全般においてイスラム諸国は将来的に有望な市場だが、それが特に当てはまるのがFOSSである。ある統計によると一神教を信奉する国々において最も発展著しい地域はイスラム圏であり、またWikipediaによると、全世界のイスラム教徒数は9億から13億になると推定されている。実際CIAから出された数値を見ても、人類の約20%はイスラム教徒が占めていることになる。そしてイスラム国家やイスラム教徒は、単にこうした数の示す以上の重要性を持っており、そうした点は、多くの人間が「イスラムすなわちテロリストかアラブの大富豪」というステレオタイプに縛られている現在だからこそ、大きな声で強調しなければならないだろう。

イスラム教徒と一口に言っても地域ごとにその信条や教派は様々であるが、これら多くの国が加盟しているのがOrganization of Islamic Conferences(OIC)という組織である。OICに加盟している56カ国の内訳は、アジアのバングラデシュとマレーシア、中東のサウジアラビア、南アメリカのスリナム、アフリカのナイジェリア、セネガルとウガンダと多岐にわたっている(なお加盟国の多くは、イスラム教徒以外の人口が圧倒的多数を占めている)。

OICおよびその下部組織であるStanding Committee on Scientific and Technological Cooperation(COMSTECH)やIslamic Academy of Science(IAS)などが押し進めているのは、加盟国におけるICT分野の発展である。こうした運動の一環としてIASが2000年に行ったのがチュニス宣言であり、そこではOIC加盟国におけるIT発展の遅延に鑑み、各種の対策が提言されていた。こうした提言の中には、各国のIT政策の見直し、教育現場での効果的なコンピュータの活用、ヒューマンリソース開発のための投資強化、OIC諸国におけるIT産業の育成、国家インフラストラクチャへのITの導入、電子政府の確立などが織り込まれている。またチュニス宣言以降に開催されたOICの会合やサミットで力説されたのが、OIC諸国におけるICT開発についてより一層の注目と努力を払うことである。

OIC諸国でのFOSSの現状

イスラム諸国において現在および将来的にFOSSのもたらすメリットを考えた場合、多くのOIC加盟国が全世界的なFOSSの潮流に飛びついたことに何の不思議もなく、実際これまでにも多大な恩恵を受けていることが分かる。例えばアジアでは、マレーシアやインドネシアなどのOIC加盟国において、政府機関、民間部門、非政府組織、および個人の間で、FOSSの導入がますます盛んになっている。マレーシアでのFOSSを積極的に採用している例としては、PIKOMやMalaysian Open Source Groupなどの組織が挙げられるだろう。また政府組織でも、Malaysian Administrative Modernization and Management Planning Unit(MAMPU)やMIMOS BerhadなどはFOSS in Malaysiaの推進を行っている。

中東もFOSSの浸透が著しい地域の1つだ。サウジアラビアからイランにかけては、多くの組織や政府機関を始め、個人レベルでもFOSSの推進が行われている。例えばイランにおけるFOSSコミュニティの中心となっているlinuxiran.orgのWebサイトでは、FarsiKDEなどのFOSSプロジェクトの紹介および、Free Software Foundation Webサイトのペルシア語訳などが掲載されている。またペルシア語版live CDも作成されており、そのベースとなっているのは、人気の高いDebian系live CDの1つであるKnoppixである。

FOSSの利用率は、アフリカ圏内のOIC加盟国の間でも高まり続けている。例えばナイジェリアやウガンダには非常に活発なFOSSユーザグループが存在し、FOSSの普及を謳った様々なプロジェクトが進行中だ。ナイジェリアの企業であるLeapsoftなどは、同国で用いられている主要な3つの言語でローカライズされたWazobia Linuxを既にリリースしているが、ウガンダでもLinuxのローカライズプロジェクトが存在しているほか、同地域初のFOSS専用トレーニングセンタであるEast African Center for Open Source Software(EACOSS)が設立されている。

将来の展望

これまでに見た情勢は、OIC加盟国において非常に活発なFOSS推進運動が展開されていることを示している。これらの国々では今後もFOSSの普及が進展することは疑いがないだろうが、その一方で以前に掲載された私の記事やLinux InternationalのJon "maddog" Hall氏の記事でも指摘されているように、インフラストラクチャその他の受け入れ側の態勢が整っていないといった多くの問題が存在するのも事実だ。確かにこうした課題は残されているものの、OIC加盟国におけるFOSSの普及は今後も増加し、長期的に恩恵を与え続けることになるだろう。

OIC諸国を始めその他の関係者が行うべき事としては、加盟国の間でのFOSSの使用を促進するための様々な戦略の確立が挙げられる。

まず最初にOIC加盟国が行うべきは、単にFOSSの使用を促進するだけではなく、自国内にFOSSアプリケーションの開発能力を育成するためのFOSS政策を打ち出すことだ。OIC諸国においてFOSSがもたらすであろう恩恵の大きさを鑑みた場合、これらの国々における公式なFOSS政策が存在しているかすら定かでない現状は、実に嘆かわしいと言わざるを得ない。

ネットワーキング化の促進も、FOSSをOIC諸国で普及する上での重要な戦略の一環である。OIC加盟国におけるFOSSユーザはIT関連の知識と経験を共有する必要があるが、その中でもFOSSに関するものは特別な意味を有している。例えばマレーシア政府によるLinuxへの移行やFarsiKDEの開発などは、OIC加盟国の間で共有可能な経験の典型例と言えるだろう。

またOIC諸国のFOSS関連組織およびユーザグループ間での協力体制を築く必要もある。例えばマレーシアでの開催が予定されているICT and the Muslim Worldなどのコンファレンスは、ネットワークの形成やOIC諸国間での知識の共有を促進する上で大いに寄与するものと期待していいだろう。

その他にOIC諸国は、FOSS関連の能力開発や支援運動に対する投資も増強する必要もある。と言うのもOIC加盟国が目指すべき究極的なゴールは、FOSSプログラムやパッケージのエンドユーザという現在の立場から脱却して、これらの提供元となることのはずだからだ。こうした目標を達成するには、Africa SourceAsia Sourceにならって、FOSSプログラムの開発キャンプやワークショップを定期的に開催する必要がある。またIT関連の組織やトレーニングプログラムでFOSSを積極的に取り入れて、OIC諸国におけるOpenOffice.orgやLinuxなどのFOSSアプリケーションの利用者数を増やすことは、FOSSパッケージの開発を志す人々を増やすことにもなるだろう。

FOSSの存在やそのメリットの啓蒙のためにOIC諸国で活動しているFOSSの支援者達が現在求めているのは、より多くのリソースである。そのためにはメディア(従来型および新規の双方)の協力を得て、人々のFOSSに関する意識を高めなければならない。また、各種の展示会を始め関連ソフトのインストール大会を催すことなども、支援活動の一環として有用だろう。最近の事例としては、マレーシア国際イスラム大学(International Islamic University of Malaysia)の学生グループが、FOSSの普及と開発体制の整備を目指して主催した、FOSSCAR 2006というFOSS系のカーニバルが挙げられる。

OIC諸国が行うべきものとして最後に指摘しておくべきことは、FOSSの普及をサポートする組織的な体制を整備することである。こうした活動の第一歩としては、OIC諸国におけるFOSSグループの活動をOIC系列の既存組織が支援するなど、様々な方法が考えられる。そして最終的には、加盟国でのFOSS普及を専門に扱う機関をOIC内部に組織するか、あるいは既存組織の一部門として設立する必要があるだろう。このような組織こそが、求められるリーダシップを発揮して、OIC諸国でのFOSS普及促進に必要なリソースや活動努力の配分を調整できるのであり、またこれらの国々がFOSSの恩恵を一方的に受けるだけではなく、FOSSのグローバルコミュニティに貢献できるだけの力を秘めた価値ある一員となるための大きな推進力ともなるはずである。

Katim S. Touray──西アフリカ、ガンビアをベースとして活動するコンサルタント。

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