LinuxWorldパネルディスカッション:デスクトップ環境の統合を目指すPortland Project

Portland Projectは、Open Source Development Labs(OSDL)のDesktop Linuxワークグループが立ち上げたフリーデスクトップ環境のプロジェクトだ。OSDLは、今週LinuxWorldにおいてこのプロジェクトとその重要性について議論するパネルディスカッションを行った。

Steven J. Vaughn-Nichols氏が司会を務め、パネリストであるOSDLのJohn Cherry氏、IBMのGreg Kelleher氏、Open CountryのLaurent Gharda氏、NovellのGuy Lunardi氏、AMDのSteven McDowell氏、IntelのWaldo Bastian氏、Red HatのJonathan Blanford氏に意見を求めた。最初の質問は、企業とコンシューマのデスクトップシステムの違いを、アプリケーションのサポート、システム管理、導入戦略の点から問うものだった。これには、パネリスト全員が、企業とコンシューマのデスクトップには別々の戦略的思考が必要なほど明確な違いがある、という一致した見解を示した。コンシューマは使えるアプリケーションでオペレーティングシステムを選ぶが、企業は管理のインフラストラクチャを考慮してOSを選ぶ。企業のでは、デスクトップPCのOSがすべて同じものではなくても、標準化によってそれぞれが同期化されており、同時にアップグレードが行われる。多くの場合、集中管理されている(また、遠隔管理も増えている)のだ。

次に、Linuxが重要な牽引役を担ったニッチ市場について議論が行われた。フリーでないオペレーティングシステムのライセンス料で企業の予算がすぐに消えてしまうような低賃金の国々や、南米の教育分野など、特別な市場について意見が述べられた。

フリーデスクトップ環境導入の加速に関する話題では、Linuxにはアプリケーション開発のための共通のツールとインターフェイスが必要だ、とBastian氏が述べた。Linuxデスクトップの9割で動作するアプリケーションを独立系ソフトウェアベンダが構築することは可能だが困難であり、残り1割についても対応が必要だという。

この残り1割のニーズを満たすことが、Portland Projectの目的である。ちなみに、プロジェクトの名は、OSDLのデスクトップ設計者たちが2005年12月に集まった場所(オレゴン州ポートランド)からとったものだ。Portland Projectは、GNOMEやKDE、その他のデスクトップ環境を統合可能な、ツールキット非依存のアプリケーションプログラムインターフェイスを開発中だ。McDowell氏からは、このAPIのプレビューリリースとOSDLによるリファレンス実装が現在入手可能との告知があった。しばらくは現在の仕様をベータ版としておき、参加者からのフィードバックに応じたうえで6月に最終リリース版を公開する計画だという。Red HatとSUSEの両社は、このPortland APIの実装を市場に提供する意向だ。

Kelleher氏は、複数のデスクトップ環境をサポートすることは、技術的に大きな障害であると同時に、ISVを混乱させ、結果としてその動きを封じている、と語った。

続いて、デバイスドライバの問題が取り上げられ、新しいドライバをもっとタイミングよくLinuxカーネルに導入するためには何が必要かについて意見が交わされた。Cherry氏は、主として求められているのはハードウェア製造業者が情報と支援を求めて集まれる場だ、と述べた。これについてLunardi氏は、この役割を果たせるのはSUSEやRed Hatのような営利目的のディストリビュータだ、と付け加えた。こうした企業は、製造業者からハードウェアの試作品やサンプルを入手できるが、通常は個人のハッカーにはできないからだという。

この時点で、聴衆の1人から割り込みで質問があった。非GPLのコードをデフォルトのインストール環境に入れるためには何ができるか、というものだ。これについて彼自身は、企業や大きな組織には、大規模な導入に際して特定のハードウェアドライバのために個別の処理を何度も行う余裕はない、と述べた。ここでパネリストたちの意見は食い違いを見せた。Red HatのBlanford氏は、コミュニティはオープンなドライバを要求しなければならない、と主張し、NovellのLunardi氏は、コミュニティはオープンでないドライバを扱う必要があるので実用的なアプローチをとるべきだ、と反論した。

最後に取り上げられたのは、状況を打開するためにOSDLは何ができるか、という話題だった。OSDLのCherry氏は、OSDLの役割は共通の問題の解決に向けてコミュニティのメンバーと協力することだ、と述べ、「よく『OSDLはいつディストリビューションを開発するのか?』という質問を受けるが、それは我々の仕事ではない」と説明した。彼が読み上げた、OSDLの今後の会議とイベントのリストに含まれていたのは、デスクトップ環境の設計者グループとのフォローアップミーティング、電源管理やマルチメディアフレームワークのような問題を考える特別ミーティングなどだ。Lunardi氏は、OSDLの会議は成果を上げ、現在も進展し続けているが、それは統合の必要に迫られたディストリビュータたちが自らOSDLを主導しているからだ、と付け加えた。

司会のVaughn-Nichols氏は、一世代前のUnixの抗争を引き合いに出し、Linuxデスクトップの統合に対する見解をまとめて、UnixベンダがMicrosoftに破れたのはあらゆる点で意見がまとまらなかったからだが、Linuxコミュニティは協力が必須だという教訓を十分に理解し、同じ過ちを繰り返さないよう心を砕いている、と締めくくった。

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