GaleonとEpiphanyが和解

路線の違いからEpiphanyGaleonのソースコードから分かれて2年、共にGNOMEをベースとする両ブラウザの開発者たちは再び手を結び、Galeonの機能をEpiphany上に再現するエクステンションを製作する。

Galeonの持つ先進機能を軽量ブラウザ上に再現するという案は、実は、2002年の終わりにEpiphanyが分かれる前から話題に上っていた。しかし、真剣に検討されることもなく具体化もされてこなかった。ところが、数週間前、ボストンで開催されたGNOMEサミットで、この案は、突如、日の目を見ることになった。会場に居合わせた開発者たちがエクステンションの利用とコード変更について話し合ったのだ。

Galeonの開発者Philip Langdaleの発表によると、今後予定される新機能の追加や既存機能の拡張はEpiphanyに対するエクステンションの形で提供。コアも変更するが一般ユーザーには気づきにくい部分にほぼ限定する。「Epiphanyにないもの」を洗い出したwikiが用意されており、ブラウザ・コアの改良ではツールバーとブックマークが、エクステンション・インタフェースの改良ではコントロールとプレファレンスが挙げられている。エクステンションとしては、現在すでに追加可能なものと将来実現したいものに分けられ後者には多数が並んでいる。

「どれも些細なことに思えるでしょうが、それが違いを生むのです。このリストにあるすべての項目を潰すことが、私たち全員の目標です」

まず最初に完了させたいのは、Personal Data Manager、クッキーやポップアップなどの動作を変更するイージー・メニュー・ショートカット、現在開いているページの状態を保存して終了するなどといった多様な終了方法だという。リンクを新しいタブに開く際back/forward履歴も複製する機能と、中クリックによるback/forward/up動作のサポート――これらの機能は、それを使わないユーザーには影響しない、つまり混乱させることはない――は、すでにコアに移植済みだという。

一方、Epiphanyの開発者Christian Perschは、次のように述べている。Epiphanyのエクステンション・インタフェースには力を入れてきた。今回の共同開発ではそれを利用した機能追加に重点を置いており、これまでの努力の「一大実証試験」のようなものだ。JavaScriptコンソールやサイドバーやスタイルシートのセレクターなど、Galeon風の機能の一部はすでにEpiphanyにもある。これからは両プロジェクトの目標を調整し、作業の重複を減らせるだろう。

「どちらの開発者にとってもいいことだと思います。活動を一つのコードベースに集中すれば、全般的な品質と機能を同時に改善できる上、ブラウザのフロントエンドにかける時間を確保することができます」

これまでの経緯

2000年の中頃、Marco Pesenti Grittiは、GNOMEで使えるWebブラウザを探していた。目指すは、一般ユーザーにも使える程度に安定していて、しかも簡素なブラウザだ。ところが、いくら探しても見つからない。ならば自分で作ろうと、GrittiはGaleonプロジェクトを始めた。Grittiの確認は取れていないが、Mozilla 1.0を基に、当時はまだリリースされていなかったGeckoレイアウト・エンジンを用いたという。

しかし、バージョン1.2になると、簡素なブラウザというGrittiの構想を逸脱していると言われるようになった。確かに、このバージョンは機能も重装備、プレファレンスも盛り沢山だった。そこでコードを書き直し、Galeon 1.3を世に送り出した。このバージョンは前バージョンより遥かに軽量で、そのため軽量版Galeonブラウザと呼ばれるようになった。GaleonのWebサイトにある歴史は、このように語っている。

簡素なブラウザを目指すGrittiが開発リーダーであることを考えれば、この原点回帰は当然の成り行きである。しかし、これはgaleon-develリスト上に路線を巡る論争を巻き起こした。中でも、Grittiが示したリリース1.3――当時、次期バージョンは2.0だと思われていた――の今後の計画が引き起こした2002年10月・11月の論争は大きなものだった。Langdaleを含むGaleonプロジェクトの多くの開発者たちの考えとは違っていたのである。

そこで、簡素で使いやすいブラウザをGNOME Human Interface Guidelines(HIG)に準拠して作ろうと、Grittiは2002年11月にGaleonを出て、Epiphanyを始めた。それ以来、EpiphanyはGNOMEの標準ブラウザになった。

「あの頃はGNOME全体が極端な簡素化熱に浮かされていました。つまるところ、そうした熱病に対する意見の相違だったのです」。Langdaleは、このように当時を振り返った。

和解へ

Galeonの主要な開発者3名――Langdale、Crispin Flowerday、Tommi Komulainen――が和解に踏み切ったのは、Galeonコードが「古び、腐っていく」のを防ぎたかったからである。3人とも仕事を持っており、Galeonに多くの時間を割くことができないのだと、Langdaleは説明している。

GaleonチームはEpiphanyと共同するが、しかし、その間もGaleonコードの保守作業は続け、Mozilla APIへの対応を維持する。また、Galeon 2.0は、年内にも作業を終えリリースできるだろうとLangdaleは見込む。その一方、Epiphanyとの共同によって、Galeonは、形はどうあれ今後も存続できるだろうし、「より活発な」開発グループが、より広く使われている類似ソフトウェアの保守作業に携わることになると述べた。

「現在のEpiphany開発チームとはコミュニケーションや協力を積み上げてきました――今回の件はその結果なのです。Epiphanyチームとは関わりなく、私たちGaleon開発者が自分たちで決めたことです。発表に先だって(Epiphanyチームに)話しましたが、彼らも協力関係が以前より強化されることを歓迎しています」

こうしたことから、GaleonとEpiphanyの開発者の間にあった考え方の違いは解消したかのように思われる。しかし、GNOMEの開発者Murry Cummingは両プロジェクトが掲げる目標は根本的に異なり、似ている点と言えば、どちらも十分に説明された設計レベルの高い投稿に対して寛大で、「ユーザーの使い勝手を改善しようという並々ならぬ熱意を持っている」ことぐらいだと述べた。

Cummingによれば、EpiphanyもGaleonもGNOMEに長年大きな貢献をしてきており、両ブラウザにとっても、またそれらが基にしたMozilla/Firefoxコードにとっても、両開発グループが再び手を結んだことは歓迎すべきことである。両プロジェクトの和解で最も重要なのは、この1年ほど注目されGrittiが初めに掲げた目標である簡素ということの重要性で合意を得たことだという。

「(両プロジェクトの確執云々よりも)遥かに興味深いのは、なぜFirefoxがEpiphanyプロジェクトの目指していた使いやすいブラウザという地位を獲得しようとしているのかということです。デスクトップとの整合性と使いやすさでは今もEpiphanyは優れており、Firefoxの上を行っています。しかし、当時とは異なり、今では使いやすいということの重要性に対して一般的な合意が形成されています」

原文