オタワLinuxシンポジウムで、カーネルの変更を考察

オタワ発――オタワLinuxシンポジウムは、カナダの首都の中心部で年1回開催される、参加者限定のカンファレンスである。世界中のLinux開発者がOttawa Congress Centreに集結し、4日間にわたってLinuxのさまざまな側面とアルコールの消費について議論を交わす。カンファレンスの初日は、WindowsでのLinuxの実行から、NFSプロトコルの新バージョン、PGP、X、衛星、出版に至るまで、多様なテーマのプレゼンテーションが行われた。

Room Bで口火を切ったのは、Dan Aloniだった。彼は、Cooperative Linuxと呼ばれる、User Mode Linux(UML)に似たプロジェクトについてのプレゼンテーションを行った。Cooperative Linuxは、LinuxカーネルをWindowsの上やLinuxの中で実行できる点がUMLと異なる。

このプロジェクトの現在のバージョンはまだ0.6.5で、ベースとなっているのはLinux 2.6.7カーネルである。Windows 2000のNTカーネル上でも実行できるが、カーネルソースに当てる135kbのパッチという形で提供される。これによって、エミュレーションではないLinux仮想マシンとして、Windows上で機能する。

本物のカーネルとコーペラティブ・カーネル

Aloniによれば、Linuxカーネルに実際に加えられた変更はごく小さいものだ。パッチを当てると、コンパイル時の定義によって、カーネルを本物のカーネルとしてビルドするか、コーペラティブ・カーネルとしてビルドするかを選択できる。

Windowsでのデモは見ることができなかったが、AloniはCooperative Linux(略してcolinux)を、彼のラップトップのXで動かしてみせてくれた。Linuxが、スクリーン上のウィンドウの内部で起動し、まぎれもないLinuxシステムがもう1つ画面上に登場した。

Aloniは、colinuxは直接ハードウェアとやり取りすることはできないと解説した。ハードウェアで必要な作業があれば、親カーネルに依頼するしかない。彼はさらに、colinuxは「Ring 0」で動作する、と語った。つまり、親カーネルには、コンピュータをcolinuxから守るためのセキュリティはなく、colinuxは必要な操作をすべて行うことができる。colinuxがクラッシュすると、仮想マシンだけでなく、コンピュータ全体が巻き込まれる危険性がある。

colinux仮想システムとホストOSは、シミュレートされたネットワークインターフェイスを通じて通信できる。さらに、colinuxのインスタンスは、RAMを使い切るまで、いつでも、いくつでも実行できる。

Room Bの2番目のプレゼンテーションはキャンセルになったが、Room CのプレゼンテーションがNFSバージョン4についてだったので、そちらに移動することにした。

J. Bruce Fieldsは、NFSv4についてのプレゼンテーションの冒頭で、NFSのほとんどの実装はバージョン2または3だと述べた。彼によれば、バージョン4は1999年または2000年ごろからUniversity of Michiganで開発されていたという。

NFSバージョン4は、以前のバージョンのNFSを基にしたものではなく、1から開発したものだ。University of MichiganによるNFSバージョン4の実装はほぼ完成しており、サーバーサイドのreboot recoveryだけが未完成だ。

NFSとは何の略か?

NFSはしばしば「No File Security」の略だと言われており、彼もこのことに言及したが、NFSバージョン4では数々のセキュリティ問題が解決されている。

公開鍵セキュリティとKerberos認証を採用することで、NFSバージョン4はファイルが平文で送信される問題を解決し、適切なユーザー認証を実現している。

午後一番のプレゼンテーションは、HPのCambridge Research LabsのKeith Packardによるものだった。彼は、直接ハードウェアと対話するのではなく、カーネルを経由して対話する方法を模索しているXプロジェクトが直面している問題について語った。

Packardは、会場を埋め尽くした数百人の聴衆に対して、Xは当初、ユーザーレベルのアプリケーションがハードウェアと直接やり取りすることを禁じない、クローズドソースのOSで動作するものだったと語った。この結果、Xはビデオハードウェアと直接対話することでしか実行できなくなったのだ。そしてLinuxが登場し、この性質はビジネスを行う上で大きな障害となってしまった。

この性質が問題なのは、ハードウェアと直接やり取りしているXが万が一クラッシュすると、Linuxはハードウェアの制御を取り戻せなくなり、システム全体がロックされてしまうということだ。さらに、Xはメモリを直接操作するため、XとLinuxが、メモリの内容を同じように認識できていないという危険性が常にある。

「ホットプラグ」とは、コンピュータの実行中に追加または削除できるハードウェアを指す用語だ。

Packardは、モニタのホットプラグはまだ正式にはサポートされていないと言った。彼の言葉を借りれば、多くのコードが、Xを起動してからモニタが変わっていないことを「知っている」のだ。

彼は、Xから削除してカーネルに加えるべきコードが多くあると語っている。彼は最後に、コンソールはまとめて撤廃し、Linuxカーネル全体をXで実行するべきだという考えを披露した。Alan Coxはこれを聞いて、もし彼がそのようなことをしようとすれば、袋叩きに遭うだろうと言ったそうだ。

PGP:Pretty Good Privacy

Dan Yorkは、小さなグループに対してPGPを紹介した。PGPとはPretty Good Privacyの略で、ファイルと電子メールの暗号化と認証のシステムである。GNU Privacy Guardは、PGPの実装の1つだ。

彼は、GNU privacy guardを使って鍵をセットアップする方法(コマンドラインで”gpg –gen-key”と入力する)、鍵の使用法、鍵の署名方法、そして鍵の送信方法を説明した。

Yorkは、PGPシステムの重要な部分はWeb信頼だと語った。鍵を送信したと主張する人物から鍵が送られてきた場合、鍵を確認するには、鍵を識別するプログラムだけでは不足だ。鍵を送信したとされる人物に会ったことがある人物に会ったことがある人物に会ったことがある・・・人物を確認することで、鍵の送信者を証明する必要がある。Web信頼では、PGPユーザーが互いの鍵に署名し、信頼のレベルを宣言するようになっている。

ユーザー同士が接触し、互いの鍵に署名すると、互いに会ったことのある人々の道筋が明確になる。鍵や、鍵で署名された電子メールおよびファイルを送信している人物が誰であるかを確認できる。

午後には、Debianの元プロジェクト・リーダーBdale GarbeeとHugh Blemingsが、アマチュア無線とIRLP、そしてAmateur Satellite(AmSat)プロジェクトについてのセッションを開いた。

birds of a feather(類は友を呼ぶ)と銘打ったこのセッションは、実際にはプレゼンテーションであった。Hughは、車の中から、ニュージーランドにいる人物と会話してみせることで、LinuxベースのInternet Radio Linking Projectのデモンストレーションを行った。

Amateur Satelliteプロジェクトは火星へ?

GarbeeはAmateur Satelliteプロジェクトについての説明を行った。このプロジェクトは、すでに51の衛星を宇宙に送り出している。現在、1つの衛星が、アマチュア衛星としては初めて火星に向かおうとしている。火星の軌道に乗るのが目標だ。

1957年、ロシアがスプートニク宇宙船を打ち上げたときから、宇宙空間での競争が始まった。そのたった4年後、アマチュア無線の愛好家たちが、OSCARと呼ばれる最初のアマチュア衛星を打ち上げた。1974年に打ち上げられたOSCAR-7は、1981から2002年にかけて機能を停止した後、不可解ながら息を吹き返した。これでOSCAR-7は、30年にわたって機能した最も古いアマチュア衛星となった。

AmSatは、衛星の1つで、GPS衛星の軌道よりも高い位置でGPS信号の質を測定するという実験を開始した。その結果、本来意図した送信先の場所でなくとも、惑星の反対側にある衛星から信号を受信することが可能であると判明した。GPS信号が機能する最大高度は機密事項であるため、米国空軍はこの実験には協力的でなかったという。

当然ながら、GPS信号についての実験結果を公表することはAmSatの義務だ、とGarbeeは言った。

この日は、このカンファレンスの主要なスポンサー企業であるAMDによる短いプレゼンテーションと、Jim Munroeによる、フリーソフトウェア対プロプライエタリソフトウェアの戦いと、作者対作者の戦いの類似点、そして、主要なパブリッシャとメディアの統合についての、充実したすばらしいプレゼンテーションによって締めくくられた。

AMDのあるエンジニアは、聴衆とLinuxコミュニティに対し、for helping bring AMDの64ビットデスクトップ・アーキテクチャをメジャーな存在にしてくれたことに関して謝辞を述べた。

SFの風刺本

このエンジニアは、『Flyboy Action Figure Comes With Gas Mask』の作者であり、No Media Kingsの創設者であるJim Munroeを紹介した。Munroeは、企業、マーケティング、未来を予見しようとするSFの傾向などを風刺した自らのSF作品について語った。

彼は、企業の合併に強い反対の意を示した。彼によれば、合併はモノカルチャーを招き、モノカルチャーはWindowsを悩ませているウィルスのような問題を引き起こすという。

Munroeの発表の最後に、AMDは、AMDのCPU3台と、Athlon 3700ベースのシステム(3,000ドル以上に相当)が当たる抽選会を行った。特筆すべきは、3台のAMD CPUのうちの1台が、Intelの代表者に当たったことだ。