[tomoyo-users 479] Linux Foundation Japan講演の報告

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Toshiharu Harada harad****@nttda*****
2008年 9月 9日 (火) 14:20:02 JST


原田です。

今日からちょうど2ヶ月前に大手町KDDIビルで
TOMOYO Linuxのメインライン化について講演を行いました。
資料の他に動画も公開されており、下記で参照できます。

http://www.linux-foundation.jp/modules/tinyd5/index.php?id=9

報告としては以上ですが、この講演をより深く楽しむための
情報について書きますので、興味と時間のある方はお読みください。

講演の依頼を受けたのは6/6で、そのときにはOLS2008 
の採択通知を
受け取けとっていました。イベントでは、mmツリーのAndrew  
Morton,
SELinuxのメンテナであるJames Morris, Labeled Networkの開発で
知られるPaul Mooreなどが来訪するということで変な発表は
できません。7月にOLSの他もう一本対応するのはさすがに
きついと思い、最初辞退しようと思いましたが、他に
引き受けそうな人がなかったこともあり結局対応することにしました。

こうしたイベントものは告知の関係ですぐにタイトルを登録
しなければならないのですが、6/9に"Realities of Mainlining -
Case of the TOMOYO Linux Project"としました(本当は、
"The Secret of Our Failures"というマイケル・フォックスの
映画のタイトルのパロディを提案したのですが、「わかりにくい」
とのことで却下)。この時点で、TOMOYO Linuxのメインライン化の
あゆみについて発表することが決まりました。

それからずっと煮詰まっていましたが、6/24に京浜東北線の
車中で、「豪華ゲスト陣に質問をしてみたらどうだろう?」と
思いつきました。何故そんなことを考えたかというと、
Linux Foundation Japanの方から、「Andrew Mortonは、
日本の開発者と対話の時間をとりたがっている」と聞いていた
ことが影響しています。

私は因果な性格で、ストーリーが決まらないと資料を書き始められない
ところがあり資料を書き始めないまま期日が近づいてきましたが、
6/27頃からMacのKeynoteの勉強を始めました。自分でも
不思議なのですが、今回の講演ではKeynoteを使おうとあらかじめ
決めていました。MacBookは今年春に会社の帰り道に衝動買いして
持っていましたが、ほとんど使っていなかったのでまずは
勉強を始めたわけです。

Macの勉強はどこでも半端な時間でもできますが、講演の
ストーリーを考えるのにはある程度の時間と集中力が
必要となります。気持ち的には講演だけに集中したいのですが、
他にやらないといけないことがあって、考えたくても
考えられない日々が続きました。その間、もちろん資料は
書けません。7/4にやっとほぼ専念できる状況になりました。

それから「基本的には他のことは何もしない」モードに
はいって、資料が書けたのは7/8(講演前日)の午後11時3 
0分です。
本文が書けてから、アニメーションやページエフェクトを
つけて、最後に自宅のTVを使ってMacのモニター出力の
切り替えについて動作を確認しました。

その日の日記です。
http://d.hatena.ne.jp/haradats/20080708

KeynoteではPDFの他にQuickTime Movie形式で出力する 
ことが
できて、それであればKeynoteでなくても(Windows環 
境でも)
Keynoteの視覚効果を再現できます(ということも今回初めて
知ったわけですが)。当日は、万一に備えて、MacBookと
ThinkPad(Windows Vista Ultimate)を持ち込みました。どちらも
個人所有しているものです。

講演資料ではゲストが3名という想定で、資料を作成していますが、
会場に着くと4名だったので驚くと同時にちょっと困ったことに
なったと思いました。もう1名のゲストはThomas Gleixnerで 
すが、
彼は昨年発表を行ったELC2007の基調講演を行ったので
見覚えがありました。今更回答者を4名に変更できないし、
だいたいThomasはセキュアOSには興味ないだろうと思ったの 
で、
予定どおり3名としました。動画を見ていただけばわかりますが、
3名は都合よく左の壁面に沿って座っています(講演資料の
中に名前を尋ねる項目がありますが、会場に行ってから
実際の座席順に合わせて変更しています)。ちなみに
質問への回答については、当日会場で依頼しましたが、James
とPaulは快諾、即答ですが、Andrew Mortonはすぐには
良いよと言ってくれません。ちょっと困りました(笑)。

今回のイベントは、同時通訳がついていました。昨年発表を
行ったPacSecの時も同様でしたが、「日本人の自分が、
英語で話した内容を通訳で日本語にしてもらう」のは
変だと思ったので、日本語で話してゲストには通訳の方の
英語を聞いてもらうことにしました(なので、開始前に
ヘッドフォンを装着してもらっています)。本当は、PacSecの
ときと同様に、「自分が話した内容を英語に翻訳し終わったのを
確認してから」次の説明に移る、というようにしようと
思ったのですが、何かの理由でレシーバーが動作しなく
なったので、講演の途中でレシーバーを外して、自分の
ペースで話しています(通訳の方にはご迷惑をおかけしてしまいま 
した)。

講演の中にはいくつかの質問事項が入っていますが、
その内容と順番は当日講演の直前に修正したもので、
前夜作成したものとはかなり変わっています。回答者の
持つ○×のプラカードのシンボルも当日朝、Keynoteで
作成したものです。また、最後のスライドのタイトルは、
当初"Thank you"でしたが、自分でレビューを重ねて
"With a Little Help from My Friend"と変更しました。

この講演で自分がやりたかったことはいくつかあります。
・ゲストをお客さんにしないで交流する
・これまで支援してくれた人々への感謝を伝える
・自分たちの経験、得られたノウハウを共有する
 (ノウハウのページは茶色になっています)
・参加者の方々にコミュニティ活動や開発に興味を
 持ってもらう
・イベントを楽しんでもらう
・TOMOYO Linuxというプロジェクトについて興味を
 もってもらう

もちろん完全ではありませんが、十分な手応えを感じましたし、
何より自分でできる最善を尽くしました。エフェクトを
用いた講演資料は、ただそのままPDFにしても意図が
伝わらないことがあるため、「資料」として公開している
ものは、公開用の資料としてアレンジしています。

この講演は個人的に忘れられないものとなりましたが、
Andrew MortonやJames Morrisの発言の内容は大変
興味深いものがありました。たとえば、資料の中で
私は「カーネル開発には勇気が必要だ」と書きましたが、
Andrewは「いや、勇気はいらないよ」とコメントしています。
また、Linuxのセキュリティ強化について、Andrewと
Jamesは「選択肢は不要」というスタンスに立ってます。
是非、動画のほうで彼らの生の声を聞いていただければと
思います。

ところで、資料の中にTOMOYO Linuxのメインライン
提案についてのスレッドへコメントを投稿してくれた
人たちのランキングがあります。
1位 Stephen Smalley
2位 paul Moore
3位 Serge E. Hallyn
4位 James Morris
5位 Pavel Macheck

ベスト5のうち2人が、そして「そろそろTOMOYOをマージして
あげたいんだけどね」と私信を送ってくれたAndres Mortonが、
またTOMOYOの世界デビューとなったELC2007で基調講演を
したThomasがゲストであったことに、不思議な因縁を感じずに
いられません。ちなみにJames MorrisはStephenと同様
SELinuxのメンテナですが、私はこの講演を行ったときにはそれを
知りませんでした(笑)。

以上です。最後に何故今頃この報告を書いているかというと、
この講演の後すぐにOLS2008の準備に入ったからです。
そちらの報告はまた今度書きます。

--
原田 季栄 (Toshiharu Harada)
harad****@nttda*****




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